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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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かぜやコロナを治す薬はなぜ作れない?

かぜやコロナを治す薬はなぜ作れない?

現代医学の知識と技術をもってしても、かぜを治す薬を作りだすことができないのはなぜなのでしょうか?

答えは、かぜを引き起こすウイルスが「種類が多く、形が単純で、すぐに変わる」という性質を持っているからです。

かぜの原因となるウイルスは数百種類にものぼるとされています。最も多いのはライノウイルスと呼ばれるウイルスですが、これだけでも100種類以上あるといわれています。「ライノ」は「鼻」という意味で、秋や春に鼻かぜを引き起こします。

次に多いのはコロナウイルスです。そう、実は厄介な「新型」ではない旧来のコロナウイルスは、毎年のように冬場に流行する鼻やのどのかぜを引き起こす、ごくありふれたウイルスなのです。

他にもRSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなど、さまざまなウイルスがかぜの症状を引き起こします。これだけ多種多様なかぜの原因ウイルスを、どれであっても退治してしまうような万能な薬を開発することは、現状では不可能です。

 

では、特定のウイルスに絞れば狙い撃ちすることは可能なのでしょうか?

一部のウイルスについては治療が可能になってきていますが、それもそうは簡単ではありません。

なぜなら、ウイルスは構造がとてもシンプルな病原体だからです。

「えっ?単純な方がやっつけやすいのでは?」と思わるかも知れませんが、実は構造がシンプルな方が薬のねらい目となる弱点を見つけ出すことが難しいのです。

 

ウイルスは、子孫を残すために必要な設計図ともいえる「遺伝子」とそれを守る「殻」だけでできています。あまりにも構造が単純であり、自分が生きていくために必要なエネルギーを代謝する機能さえ備えていませんので、単体では何もできません。

ウイルスはヒトや動物に感染して細胞の中に入り込み、そこからエネルギーや不足している機能をうまく利用することで、はじめて活動して増殖、つまり子孫を残すことができるのです。

ウイルスは一見生き物のように思えますが、自分で増える能力がないため、実は分類上は「生き物」とはみなされていません。ヒトや動物への感染を繰り返すことが、ウイルスが生き続けるために必須の条件です。

 

そして、この単純すぎる構造故に、薬のターゲットにする部分が限られてしまいます。もしもウイルスの遺伝子を狙う薬を作ったとしても、遺伝子が変異していくスピードがとても速いために、ウイルスを倒す効果がすぐに失われてしまうでしょう。

しかも、ウイルスが増殖するのは、厄介なことにヒトの細胞の中です。ウイルスが増えるところを抑えようとすると、今度はヒトの正常な細胞にも影響を及ぼす可能性が出てきます。

 

ですから、ほとんどのウイルス感染に対して現状の医学でできることは、症状を和らげる対症療法しかないのです。

 

では、今大変な社会問題になっている新型コロナウイルスについてはどうでしょうか?

 

新型コロナウイルスそのものを死滅させるような薬はまだ開発されていないものの、ワクチンは異例の速さで開発に成功しました。そして、驚くことに90%以上の予防効果というこれまでのワクチンの常識ではにわかに信じがたいような極めて高い有効性が報告されています。

今回開発されたワクチンはm(メッセンジャー)RNAワクチンと言う、これまでに全くない新しいタイプのものです。新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際に重要な役割を果たすスパイクというタンパク質を作り出す遺伝子の情報をもとにして作られています。

あくまで理論上の話ですが、有効性が高いだけでなく、ウイルスそのものを弱めて使う従来の不活化ワクチンや生ワクチンよりも安全性も高いように思えます。

もちろん未知なるものですので実際に使ってみないと分かりませんが、ワクチンによってコロナの世界的な大流行が収束に向かうことに大いに期待したいところです。

 

しかし、例えワクチンの接種が始まったとしても、そう簡単にコロナとの戦いは終わりとはいかないのかもしれません・・・

新型コロナウイルスが持つ遺伝子は、ヒトのように二重らせん構造をもったDNAではなく、1本鎖RNAというより不安的な構造をしており、極めて速いスピードで遺伝子が変化していきます。

東京大学が「新型コロナウイルスが遺伝子変異により感染力を増したことを動物実験で確かめた」と報告しているように、ウイルスも生き残るために日々必死に姿を変えているようです。

もしも、ワクチン開発のもとになった部分の遺伝子が大きく変異してしまうと、大量に生産されたワクチンの効果が急に薄れて無駄になってしまうという恐れもゼロではないと思います。

 

一日でも早く、安心して出歩くことのできる平和な世界に戻ることを祈るばかりです。

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ