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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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バレット食道とは?

バレット食道とは?

胃カメラ検査後にもらった報告書に「バレット食道」と書かれていたら・・・

「いったいこれは何?」

「心配しなきゃいけない状態なの?」

と不安に思われるかもしれません。

 

結論から先に言いますと、日本で見つかるほとんどの「バレット食道」はまず「心配ない」ものです。

 

1.バレット食道とは?

 

では、バレット食道とはいったい何なのでしょうか?

 

胃の表面は「円柱上皮」と呼ばれる組織で覆われています。

胃の円柱上皮は、食べたものを溶かす強力な胃酸を分泌するだけでなく、同時に自らの身を守るための粘液を分泌するという特殊な能力を持ってます。

 

一方で食道の表面は、胃とは全く違う「扁平上皮」という組織で覆われています。

食道だけでなく口や舌、気管、肛門、皮膚などの臓器も扁平上皮で覆われており、その表面は白っぽく見えます。

 

キュッと締まっている向こう側が胃です。チラッと見えているオレンジ色の粘膜が円柱上皮で覆われた胃の粘膜です。手前の血管が透けて見える白い部分が扁平上皮に覆われた食道の粘膜です。

 

「扁平」の名の通り魚のうろこに似た平べったい形をした組織で、円柱上皮とは違い粘液を分泌する能力はありません。

そもそも、食道は食べ物や飲み物が一瞬で通り過ぎていく管ですので、酸などの刺激に長時間さらされることは本来無く、粘液を出して自らを守る必要も無いためです。

 

・・・ですが、もしも酸の攻撃を受けるような状況になると、食道は無防備でとても弱いのです。

 

バレット食道ができる主なきっかけは、「逆流性食道炎」だと考えられています。

前かがみの姿勢や内臓脂肪による胃の圧迫、食べてすぐに横になるなど、さまざまな原因で胃酸が食道に逆流してしまうと、胃と食道の境目に炎症が起きます。

これが逆流性食道炎です。

 

そして長い間胃酸の攻撃を繰り返し受け続けると、食道の扁平上皮は胃酸の攻撃に強い胃の円柱上皮に置き換わることで自分の身を守ろうとします。

これが「バレット食道の正体」です。

 

胃カメラでみると、オレンジ色の円柱上皮で覆われた胃の粘膜が、胃と食道の境目を超えて食道側にまで広がっている状態が観察されます。

 

つまりバレット食道は、「逆流してきた胃酸との闘いの跡」です。

「バレット食道はあるけど、今現在逆流性食道炎はみられない」という人は、食道が胃の粘膜に「化ける」ことで胃酸の攻撃から何とか守り勝った状態と言えます。

あなたの知らないところで、食道が頑張って自ら食道炎を治してくれたのです。

ですから、バレット食道があることで、とくに症状を感じることはありません。

 

一方で、「バレット食道がみられ、さらに今現在逆流性食道炎もみられる」という人は、今後さらにバレット食道の範囲が広がっていく可能性があるため、注意が必要です。

胸やけなどの症状がある場合は、胃酸を抑える薬で治療をした方が良いでしょう。

 

2.バレット食道はがん化する?

 

バレット食道自体が症状を起こすことはありませんので、治療の必要はありません。

問題なのは、将来の「がん化」につながるかどうかです。

 

欧米では、バレット食道から食道腺がんが発生する危険性が指摘されています。

ですが、「欧米のバレット食道」と「日本のバレット食道」は特徴が大きく異なりますので、これがそのまま当てはまるわけではありません。

 

一番の違いはその長さです。

 

食道胃接合部から口側に「全周性に3cm以上」のバレット粘膜を認めるものを long segment Barrett’s esophagus (LSBE)と言います。

がん化の問題が指摘されているのはこのLSBEです。

胃酸の逆流による慢性炎症によって広範囲の食道がダメージを受けた状態ですので、当然の結果とも言えます。

食道がんの発生率は年間0.5-1.2%程度と報告されており、1-2年毎の胃カメラによるフォローが推奨されています。

このLSBEは肥満体型の欧米人によくみられるのですが、日本での罹病率はごくわずかで0.3%程度です。

 

一方、バレット粘膜の長さが「3cm未満あるいは非全周性」のものをshort segment Barrett’s esophagus (SSBE)と言います。

日本人のバレット食道のほとんどがこのタイプで、罹病率は15.8%程度とされています。

つまり、日本におけるバレット食道の99%は、欧米よりもずっと軽いSSBEなのです。

しかも、その多くが長さ1cmにも満たない超SSBEです。

 

日本人のSSBEから発生する食道がんの頻度を示した質の高い研究は今のところありませんので断言はできませんが、がん化することは極めてまれだと考えられています。

 

ですので、SSBEについては現時点では過度にがんの心配をする必要はありません。

バレット食道だからといって、毎年胃カメラを受ける必要もないでしょう。

 

SSBEを指摘された方は、再び逆流性食道炎を起こしてバレット食道の範囲が伸びてしまわないように、当ブログの「胃食道逆流症」や「食道裂孔ヘルニア」の項を参考に、生活習慣の改善を心掛けるようにしましょう。

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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