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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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胃カメラはどのくらいの間隔で受ければいい?

胃カメラはどのくらいの間隔で受ければいい?

胃カメラを受けた患者さんから、検査後に「次はいつ受けたらいいんでしょうか?」というご質問をいただきます。

2020年11月9日のブログにも一度少し書いていますが、改めて詳しく説明しましょう。

症状が無い方に胃カメラを受けていただく主な目的は、胃がんを早期に見つけることです。

ですから、どれくらいの間隔で検査を受ければいいかは、その人が「胃がんになる危険性が高いかどうか」によって決まります。

 

単純に分けると、

危険性が高いのは、ピロリ菌に感染している、または感染していた人(除菌治療後)

危険性が低いのは、ピロリ菌に感染したことがない人

です。

 

胃がんの原因の99%は、ピロリ菌の感染による慢性胃炎です。

ピロリ菌は乳幼児期に感染し、胃に棲みつきます。

すると、症状が無くても胃には100%炎症が起き、徐々に胃の老化である「萎縮性胃炎」(胃の粘膜が薄くなった状態)になります。

これが、胃がんが発生する母地です。

 

まずは、胃カメラで

ピロリ菌が居そうな萎縮性胃炎があるのか?

ある場合、萎縮がどの程度まで広がっているのか?

実際にピロリ菌が感染しているのか?

を調べることがとても大切です。

 

ピロリ菌が感染していることが分かった場合は、すみやかに除菌治療を受けることが勧められます。

20歳代で除菌を受けた場合は99.9%、30歳代ならおよそ98%、胃がんを予防することができます。

つまり、若いうちにピロリ菌感染の有無を調べて除菌をしておけば、もともと感染していない人と同じように、胃がんにはほぼならなくなります。

ところが、除菌を受けた年齢が上がるごとに、胃がんを予防する効果は低下していきます。

 

これは、年齢と共に萎縮性胃炎の範囲が広がっていくためです。

 

つまり、とくに40歳代以降でピロリ菌の除菌治療を受けた方は、

「除菌が成功したから、もう大丈夫!」

・・・という訳では、残念ながらありません。

 

除菌では今まで受けた胃のダメージを完全にチャラにはできず、胃の老化がこれ以上進まないように食い止めるだけです。

もちろん、ピロリ菌を除菌せずにそのままにしているよりは、胃がんになる危険性は下がるのですが、一度老化してしまった胃は、もともとピロリ菌が感染していない方のような若々しい胃には戻りません。

 

タバコを吸っている方が禁煙しても、元通りのきれいな肺には戻る訳ではなく、肺がんになる危険性がゼロにはならないのと同じことです。(吸い続けるよりはもちろんいいのですが)

 

ですので、除菌治療を行った方には、まず1年後の胃カメラを推奨しています。

そして、その後の検査の間隔は、除菌が成功した時点でみられる萎縮の拡がり、つまり胃の老化の程度によって決めています。

 

萎縮性胃炎は、胃の出口から入口に向かって徐々に広がっていき、C-1、C-2、C-3、O-1、O-2、O-3の6段階に分類されます。

C-1が一番萎縮の範囲が狭く胃の出口だけ、O-3は胃全体に萎縮が拡がっている状態です。

萎縮の範囲が広いほど、胃がんが発生しやすくなります。

萎縮が無いまたは軽いC0/C1を基準にすると、胃がんになる危険性はC2/C3で13.4倍、O1/O2で27.2倍、O3では60.6倍にもなるという報告があります。

萎縮がある場合には、みなさまにお渡しする胃カメラの所見用紙にこの拡がりが記載されていますので、ご確認ください。

 

わたしのお勧めする胃カメラの間隔の目安は、

萎縮が軽いC-1なら3年毎

萎縮が中等度のC-2、C-3なら2年毎

萎縮が重度のO-1、O-2、O-3なら1年毎

です。

 

つまり、若いうちにピロリ菌が感染していることが分かって、萎縮性胃炎が広がらないうちに除菌できたのなら、毎年のように検査を受ける必要はありません。

 

一方、そもそも幼少時にピロリ菌に感染しなかった人には、胃がんは滅多にできませんので、胃がんの検診を目的とした定期的な胃カメラは、基本的に受ける必要はありません。

ピロリ菌が感染していない方に多くみられる「胃底腺ポリープ」を指摘されている方も、がん化することはほぼありませんので、定期的な検査は不要です。

 

もちろん、ピロリ菌未感染の人にも胃がんは「ゼロ」ではありません。

胃がんの原因の99%はピロリ菌の感染による慢性胃炎・・・ということは、逆に残りの1%の胃がんはピロリ菌に関係なく発生してきます。

 

ただし、これを心配しだすと、きりがありません。

冷静に考えると、その頻度はかなり低いものです。

 

無症状の方に行う検診の胃カメラで、胃がんが発見される確率は0.45%と言われています。

そのうちの99%がピロリ菌に関連した胃がんと考えられますので、ピロリ菌に関係しない胃がんが検診で見つかる確率は0.45%のうちのさらに1%=0.0045%、つまり計算上はおよそ2万人に検査して1人に見つかるというとても低い確率になります。

 

ピロリ菌が感染していないと分かっている方に、そこまで「稀ながん」を検診の対象として探す必要があるかというと、費用対効果の面からも少し疑問です。

ですから、今のところピロリ菌が感染していない無症状の方には、定期的な胃カメラは推奨されていないのです。

ご心配なら、念のため3〜5年に1度受けるといったところでしょうか。

 

よく「会社の検診で毎年バリウムか胃カメラを受けさせられるんです・・・」とおっしゃる方がおられますが、ピロリ菌が感染していないと分かっているなら、毎年検査を受ける必要は本来は全くありません。

そもそも胃の検査は、法律上、定期健康診断の必須項目ではありませんから。

 

あと、よくお聞きするのは、「うちは胃がんの家系なので・・・」というお話です。

実はこれも、あまり心配する必要はありません。

胃がんのうち、遺伝が関係しているものは極めて稀です。

ご家族に胃がんを患った方がおられるからと言って、ご自身もその危険性が高いというわけではありません。

ご両親やご祖父母の世代は、ピロリ菌の感染率が高く、しかも今のようにピロリ菌の感染が胃がんの原因になることが分かっていなかったのために、除菌もされず胃がんになる方が多かっただけです。

ご自身が、ご家族から幼少時にピロリ菌をもらってさえなければ、頻回に胃カメラを受ける必要はありません。

 

さて、勘違いされる方がいらっしゃるかもしれませんので念を押しておきますが、今日の説明は、あくまでも無症状の人の話です。

胃や食道に気になる症状がある場合は別で、その原因を調べるための内視鏡検査は随時必要です。

 

また、胃カメラは、胃がん以外にも咽頭がんや食道がんの早期発見にも役立ちますので、ピロリ菌未感染で症状の無い方が受けることに意味が無いわけではありません。

とくに咽頭がんや食道がんの危険因子であるタバコやお酒をよく飲む方は、ピロリ菌未感染のきれいな胃でも2年に1度程度は胃カメラを受けておいても良いと思います。

 

また、逆流性食道炎や粘膜下腫瘍などと診断されたことがある方も、1〜2年に1度は胃カメラを受けましょう。

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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