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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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潰瘍性大腸炎と大腸がん

潰瘍性大腸炎と大腸がん

潰瘍性大腸炎(UC)の患者さんに対する内科治療は、この数年間で劇的に良くなりました。

とくに炎症を抑えるために使うステロイドが効かない、あるいは効くけどステロイドが止められないといった難治性のUC患者さんに対して、新しく開発されたさまざまな治療が選べるようになったことは、とても大きな進歩です。

以前なら外科手術で大腸を全摘しなければならなかったような強くしつこい炎症も、お薬でかなりコントロールできるようになりました。

 

しかし、残念ながら手術が必要になるUC患者さんがほとんどいなくなった…という訳ではありません。

難治で手術が必要になる方は着実に減ってきているのですが、実は別の理由で手術せざるを得なくなる方が増えているのです。

 

別の理由…それは大腸がんです。

 

そもそも、肉食や飲酒の習慣、食物繊維不足や運動不足といった環境の変化によって、大腸がんになる日本人は近年とても増えています。さらに、UCの患者さんは「慢性の炎症」という大きな要因が加わりますので、一般の方に比べると大腸がんになる危険性がとても高いのです。

 

炎症によって大腸の粘膜の遺伝子に傷がつきます。そして、それが長年積み重なることによってがんが発生します。海外の報告で大腸がんの累積発生率をみると、UCを発病してから10年で1.6%、20年で8.3%、30年で18.4%とされており、時間の経過とともにがんになる方が増えていきます。

 

ただでさえUCという難病なのに大腸がんなんて…

どうしても怖いイメージを持たれる方が多いと思いますが、がんの発生を初期に見つけ、手術を受ければ命を落とすことはありません。

 

そして、その早期発見のために絶対に欠かせないのが、定期的な大腸内視鏡検査です。

わたしたちはこれを「サーベイランス」と呼んでいます。

UCを発症してから7年以上経過している患者さん、とくに直腸より奥まで炎症が広がっていたことのある患者さんについては、1〜2年おきに大腸カメラを受けることが推奨されています。

 

「せっかく病気が落ち着いていて調子いいのに、カメラを受けるのは気が進まないなぁ…」というお気持ちもよく分かるのですが、落ち着いている時にこそ検査を受ける意味があります。

 

なぜなら、UCに発生する腫瘍はとてもとても見つけにくいからです。

 

やっかいなことに、UCに発生する腫瘍は平べったいもの、境界がはっきりと見えないもの、炎症による変化なのか腫瘍なのかを外見で区別できないものが多いというのが特徴であり、炎症がある状態で内視鏡で探そうとしても、ほとんど分かりません。

海外ではほんの数年前まで、「UCに発生する腫瘍の多くは内視鏡では見つけられない」というのが定説になっていて、とにかくたくさん(1回の内視鏡検査で30〜40個!)の組織をランダムに取りまくって顕微鏡で調べるという、偶然頼りのなんとも効率の悪い方法が主流でした。

それだけ炎症の中から腫瘍を見つけるのは難しいことなのです。

治療が良くなって炎症が抑えられるようになったこと、内視鏡の進歩で細かいところまで見えるようになったこと、UCに発生する腫瘍の特徴が分かったことで、この数年でやっと「UCに発生する腫瘍の多くは内視鏡で見つけられる」という考えになり、「あやしいところだけ組織を取って調べよう」という方針に変わってきました。

ただし、「経験豊富な専門家が注意深くがんばって見れば」と「炎症が落ち着いている状態であれば」ということが前提になります。

ですから、できるだけ内視鏡でみてきれいに炎症がゼロになっている状態(粘膜治癒と言います)の時にこそ、がん検診のための内視鏡をする意味があるのです。

 

お腹の調子が良いとお薬を飲み忘れがちですが、寛解状態を維持するための治療はしっかりと続けることが肝心です。とくに、ペンタサ、アサコール、リアルダといった5-アミノサリチル酸製剤には炎症を抑えるだけでなく発がんを抑える効果が認められていますので、欠かさずに服用を続けましょう。

「お腹の調子は良いけどカメラで見ると炎症が残っている」という場合には、将来的な発がんの予防のために治療を足したり、変えたりすることも考えなくてはいけません。

 

とくに、難治性の経過で新薬を使ってやっと落ち着いた…という方は、言い換えれば以前ならとっくに手術になっていた方とも言えます。内科治療の進歩は間違いなく患者さんにとって福音ですが、本来なら手術になるぐらいの強い炎症でダメージを負った大腸粘膜を抱えたまま、長年経過をみることになるという視点も忘れてはいけません。

 

今後、こういったUC患者さんを中心に大腸がんの発生が増えることが予想されますので、大腸カメラは定期的にしっかりと受けましょう。

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ