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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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胃腸内科 / 内視鏡内科

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「のどのつまり」はヒステリー!?

「のどのつまり」はヒステリー!?

「のどに何かがつまっている感じがする」

「のどに塊のようなものがある気がする」

「でも、耳鼻科では何も異常がないと言われた」

・・・クリニックにはこのような訴えの患者さんがたくさん来られます。

 

咽頭や喉頭、食道のがんの可能性もありますので、まずは胃カメラで異常がないかどうかを確かめることをお勧めします。

・・・ですが、本当に食道が狭くなっていたり、食道に腫瘍が見つかったりすることは滅多にありません。

 

えーっ!? こんなにのどがつまっているのに何もないなんて・・・おかしい!

 

と思われるかもしれませんが、ご飯はちゃんと食べられているでしょ?

本当にのどや食道がつまっている訳ではないんです。

では、いったいなぜのどや食道に「何もない」のに「何かある」あるいは「つまる」と感じてしまうのでしょうか?

 

その原因は、大きく分けて2つあります。

1つは「胃酸の逆流」、もう1つは「ストレスや不安」です。

 

まずは、「胃酸の逆流」。

胃酸が胃から食道に、さらにのど(咽頭喉頭)にまで逆流し、粘膜を刺激することによって「のどのつまり」や「のどに何かある」「のどが沁みる」といった症状が現れます。

これを「咽喉頭酸逆流症」と言います。

 

のどの症状を感じるタイミングが、胃酸が出やすい食後であったり、胃酸が逆流しやすい夜寝る時であったりする場合には、胃酸が関係している可能性が高くなります。

 

また、胃カメラで見た時に食道に明らかな逆流性食道炎(食道のただれや炎症)がなくても、胃酸の逆流が刺激となり、のどのつまりを感じることは珍しくありません。

胃酸を抑えるお薬を試してみて症状が和らげば、胃酸が関係していることがはっきりします。

 

 

そして、もう1つの大きな原因は「ストレスや不安」です。

 

胃カメラでのどにも食道にも異常が無く、胃酸をお薬で抑えてものどの症状が良くならない・・・そういった場合の原因の多くは「ストレスや不安」であり、「咽喉頭異常感症」または「ヒステリー球」と呼ばれています。

 

「ヒステリー」・・・あまり響きの良い言葉ではありませんね。

俗に言う「ヒステリー」とは、感情をおさえきれず、激しく怒る、泣くことを指します。

 

1707年にJohn Purcellという人が、ヒステリックな人がのどの奥に球(たま)のような塊がつまっている違和感をよく訴えることから、「ヒステリー球」と名付けたのが始まりのようです。

その後、この症状が何もヒステリックな人に限ったものではないとして、「咽頭球」「咽喉頭神経症」「咽喉頭異常感症」などと呼ばれるようになりました。

 

ヒステリー球の特徴は、

・のどに「つまる」「何かある」といった不快感が常にある

・でも、ご飯や飲み物がつまることはなく食べられる

・日ごろからストレスや不安をよく感じている

・30歳から60歳代の女性に多い

といったところです。

 

海外の報告によると、45%の人が一生に一度は「ヒステリー球」の症状を経験すると言われており、決して珍しい病気ではありません。

「わたしはストレスも不安もゼロです!」・・・なんていう鋼のメンタルの持ち主は滅多にいませんので、誰にでも突然症状がでる可能性があるわけです。

「よくあることで心配ありませんよ。」と説明すると、患者さんは少し安心されます。

 

とくにヒステリー球になりやすい人は、日ごろからストレスをため込みやすい、あるいは不安を抱えやすい真面目な方、心配性の方、責任感が強い方、我慢強い方、そしてもともと自律神経失調症や不安神経症、うつ病といった心身の問題を抱えておられる方などです。

また、月経や妊娠・出産・閉経などでホルモンのバランス変化する女性の方が発症しやすく、更年期障害も関係しているのではないかと言われています。

 

確かに、クリニックに「のどがつまる」という症状で来られる方は、問診票のストレスの項目に「よく感じる」と答えられる女性が多いのは、間違いありません。

仕事のこと、人間関係、思い通りにならない子育てのこと、嫁を気遣わない旦那のこと(←誰のことや?)・・・ストレスや不安の種は日々色々とありますよね。

とくに最近は、コロナ禍でストレスを発散する機会まで奪われ、調子を崩される方が増えている印象です。

 

ストレスや不安を感じると、のどや食道の粘膜に「知覚過敏」を生じたり、のどや食道の「筋肉が痙攣や過剰に収縮」したりして、のどの奥の方に「球」があるような感覚になると言われています。

これが、見た目には「何もない」のに「何かある」と感じてしまう正体です。

 

そして、一度のどの違和感が気になり始めると、

「あれ?・・・のどに何かある・・・」

「もしかして食道のがんかも・・・」

と不安感が募り、余計に気になってしまうという悪循環に陥ってしまいます。

 

身近な親しい人が「がん」になったと聞いた途端、「そう言えばわたしも・・・」と急に不安に駆られてのどが気になり始める人も少なくありません。

 

まずは、胃カメラで「何も無い」ことを確認し、誰にでも起こりえる「心配ない」状態だと安心することが大切です。

 

そして治療として、まずは胃酸を抑えるお薬を飲んで、胃酸の逆流が関係しているかどうかを確かめます。

それで、良くなればもちろんOK。

 

でも、ヒステリー球の方は逆に「胃酸の減少」が関係していることもあると言われています。

胃酸の分泌が少ないことにより胃の中で食べ物が消化せず、未消化のタンパク質が逆流して食道にアレルギーを引き起こしている可能性があります。

「胃酸過多の逆流」と決め付けて、効いていない胃酸を抑えるお薬を飲み続けると、かえって症状が悪化することもあり得ます。

 

胃酸を抑えるお薬で症状が良くならない場合、のどの知覚過敏を抑えるためによく使うのが漢方薬です。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、リラックス効果のほか、のどのつかえ感や違和感を緩和する効果が期待できます。

それでも良くならない心因的な要素が強い方には、抗不安薬などの治療が必要となることもあります。

 

「ヒステリー球」と言われた方は、まずは現状を受け入れ、気にし過ぎないようにすること。

そして、気分転換やストレスを上手に発散するように心掛けましょう。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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