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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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うわさのミルクティーエコー

うわさのミルクティーエコー

今年の9月初め、急に「午後の紅茶 ミルクティー」がSNSで話題となりました。

いわゆる「バズる」というやつです。

 

いったい、なぜ急にミルクティーがバズったのか・・・?

 

それは、「午後の紅茶ミルクティーが膵臓がんの早期発見に役立つ」とのニュースが、テレビのワイドショー(羽鳥慎一モーニングショー、情報ライブ ミヤネ屋など)やネットで取り上げられたからです。

 

Twitterでは、

・トレンドに午後の紅茶が出てて、ミルクティーが膵臓がんの超音波検査に役立つってあったの。ウッソだぁ!フェイクニュースだろってweb検索したら、西宮市のクリニックのブログにあったよ…ミルクティーエコーって。

(←ウチのブログ!)

 

・なんの冗談だよって・・・・・って思ってたけど、ミルクティーエコーとか言いだしてる病院あるよ まじかよ・・・・・いよいよガチネタじゃん・・・・

 

・一見変な感じもするけど、安く手に入るものでそんな効果が得られるのはかなりすごいのでは!

 

・ミルクティーエコー、ネーミングがオシャ

 

・おいしい検査薬できました

 

・紅茶花伝ではあかんか?

 

などなど、大盛り上がり。

 

しかし、大阪府立成人病センター(現大阪国際がんセンター)の検診スタッフがミルクティーを用いたこの「膵精密超音波検査」を開発したのは、今から20年以上も前のことです。

 

なぜ、今さら話題になるの・・・?とも思いましたが、どうやら今年になってミルクティーエコー(正式名称ではなく俗称です)の有用性を示す新たな論文が発表されたことが1つのきっかけとなったようです。

 

Predictive Factors for Pancreatic Cancer and Its Early Detection Using Special Pancreatic Ultrasonography in High-Risk Individuals. Cancers 2021; 13: 502

 

この論文中では「commercially available black tea with milk」と紹介されていますが、膵精密超音波検査で実際に使われているのが、「午後の紅茶 ミルクティー」。

膵がんの高リスク群と言われる膵嚢胞(すいのうほう)や主膵管拡張をもっている498人を、この検査方法で平均5.9年間フォローしたところ、11人に膵がんが発見され、しかもその内73%(8人)がステージ0/Iという早期がんだったと報告されています。

 

日本で診断される膵がんの内、ステージIで診断される確率が5%未満であるという現状を考えると、これは驚異的な早期発見率だと言えます。

 

 

もともと、腹部超音波検査(エコー)は、患者さんへの負担がほぼ無い簡便な検査である上に、小さな病変を見つけるのが得意な、検診に適した検査方法です。

小さな病変を見つける能力においては、CTやMRIといった他の画像検査よりも優れています。

 

・・・ですが、弱点もあります。

超音波の最大の敵は「空気」です。

空気には超音波を通しにくい性質があるのです。

 

 

膵臓という臓器はお腹の中でも奥の方、胃の裏の背中側にあります。

そのため、胃の中に空気が溜まっていると、そこより奥に超音波が届かなくなり、膵臓は半分程度までしか観察できません。

当然、この死角になる部分の膵臓にがんできていたとしても、見逃されてしまいます。

さらに膵臓がんは、この見つけにくいという特徴に加えて、早期には腹痛などの症状があらわれにくく、進行が早く、予後も悪いという「最悪の特徴そろい踏み」のがんです。

膵がん全体の治療成績をみると、5年生存率はたったの10%にも届きません。

つまり、ほとんどのケースで診断された時点でがんは進行しており、命を救うことができていないのです。

それ故に、これだけ検査や治療の技術が進んだ現代においても、膵臓は未だに「暗黒の臓器」と恐れられています。

 

・・・ですが、早期発見に向けて、その重くて暗い扉を開いてくれるのが、もしかすると「ミルクティー」なのかもしれません。

 

ミルクティーエコーについては、開業前の2020年8月10日のブログで書きました。

院長ブログ:ミルクティーエコーって??

 

実は、「ミルクティーエコー」でググると、なぜかわたしが書いたこのブログが一番にヒットします。

そのためか、ニュースが話題になってからうちのクリニックも「ぷちバズり」状態。

 

ミルクティーエコーに関するお問い合わせや検査のご依頼をたくさんいただきました。

中にはわざわざ九州から検査を受けに来られた人も・・・

 

検査の日には絶食でお越し頂き、ペットボトルの「午後の紅茶 ミルクティー」を、タピオカ用の太いストローで静かに飲んでいただきます。

ストローで飲むのは、胃の中に空気を一緒に飲み込まないようにするためです。

脱気されていて酸素を通しにくいホット用のペットボトル入りのものが一番良いのですが、手に入りにくい時期にはコールド用のペットボトルで代用しています。

胃をしっかりと満たすためには、350ml全部飲んでいただくのがベストです。

ではなぜ、ミルクティーなのか?

 

それは、胃を満たす飲み物ならなんでも同じかと言うと、そうではないからです。

ちなみに同じ紅茶でも、ストレートティーやレモンティーでは同じようには見えないようです。

おそらく、カギを握っているのは乳脂肪の成分なのでしょう。

その配合が絶妙なためか、胃の中をミルクティーで満たすと、その裏にある膵臓まで超音波がしっかりと届いてくれます。

しかも、ロングセラーで20年以上前から変わらずずっと手に入るという最善の飲み物が「午後の紅茶 ミルクティー」なのです。

 

きっと、紅茶花伝でも大丈夫なんでしょうけど・・・。

 

わたしは開業してからこの検査法を始めましたので、体位の変換など試行錯誤しながらよりしっかりと膵臓を見るための工夫を重ねている最中です。

ですが、ミルクティーエコーは何も飲まずに行う通常の方法に比べて、膵臓全体が良く見えるのは明らかです。

大阪国際がんセンターの論文においては、この方法によって膵臓の観察範囲が70%から92%へ増えることが報告されています。(Eur J Radiol 2017; 91: 10-14)

ただし、大阪国際がんセンターで行われる膵精密超音波検査は、40分ほどかけてくまなく検査を行うようですし、経験値が違いますので、同じ土俵では語れませんが・・・。

 

そして実際にこの方法を実践してから、がん自体は見つからなくても、膵嚢胞(すいのうほう)という液体が溜まった袋が見つかることが増えました。

この膵嚢胞がある人は、膵がんになるリスクが22倍に高まると言われています。

こういった膵がんができやすい注意をするべき方を、簡単な方法で見つかられるのが、ミルクティーエコーの最大のメリットだと思います。

 

膵嚢胞が見つかった方は、定期的にミルクティーエコーでフォローさせて頂くだけでなく、念のためにMRIや超音波内視鏡など、さらなる精密検査ができる病院に紹介させていただいています。

 

 

ここで超音波内視鏡(EUS)について少しだけ解説を。

超音波内視鏡は、カメラの先端に超音波装置が備わった内視鏡(胃カメラ)です。

胃の壁や十二指腸の壁越しに、すぐ向こう側にある膵臓や胆嚢などを至近距離で詳細に観察することができます。

当然、膵臓の精密検査としてとても良いのですが、特殊なカメラですので通常の胃カメラの1.5倍くらいの太さがあり、しかも検査に時間もかかりますので鎮静剤の使用が必須です。

患者さんの負担を考えると、何も症状が無い方に検診で毎年実施するには、少しハードルが高い検査になります。

わたしたちのクリニックには置いていません。

 

それに対して、ミルクティーエコーは特殊な機械はまったく必要なく、患者さんの負担もありません。

 

・・・と言うか、検査前は絶食ですので、みなさんおいしそうにゴクゴク飲んでいただけています。

 

しかも当院ではミルクティーはサービス!

簡単なうえ、お得?です。

 

しかし、当たり前のことですが、ミルクティーエコーは万能な検査ではありません。

もともと胃に空気が多量に溜まっている方や、太っていて内臓脂肪が多い方などは、ミルクティーを飲んでいただいても十分に膵臓が見えないこともあります。

 

また、エコーだけで膵がんの診断ができるわけではなく、精密検査と言うよりもあくまでスクリーニングに適した検査です。

 

今回、急に注目が集まることになった「ミルクティーエコー」ですが、一般の病院やクリニックではまだほとんど行われていません。

こういったことをきっかけに一般の方だけでなく、検査を行うわれわれ医療者の意識も高まり、膵がんで命を落とす方が一人でも減ると良いですね。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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