過敏性腸症候群の原因は腸内細菌?
腸に異常が見当たらないのに、腹痛や腹部の不快感、下痢、便秘といった便通異常が起こる過敏性腸症候群(IBS)。命にはかかわりませんが、ストレスがかかると悪化し、日常生活の質を低下させる本当にやっかいな病気です。
しかし、IBSは精神的なストレスだけが原因という訳ではなさそうだ、ということが分かってきました。
注目されているのは、またもや「腸内細菌」です。
これからの蒸し暑い時期は食中毒の発生に注意が必要ですが、実はこの食中毒がIBS発症の引き金になることが分かっています。
普通は、もし食中毒になったとしても、原因となる病原菌が腸から出ていてしまえば、数日でお腹の症状は完治します。
ところが、病原菌がいなくなった後も腸の不調がずっと続き、IBSを発症する患者さんがいらっしゃることが以前から知られていました。
これを、感染性腸炎後IBS(post-infectious IBS)と言います。
病原菌の感染が引き金となって腸内細菌のバランスの乱れ(ディスバイオーシス)が生じ、IBSが発症するものと考えられています。
これを裏付けるように、健康な方の腸内細菌と、IBS患者の腸内細菌の組成を比べると、両者に明らかな違いがあることが最近の研究で報告されており、腸内細菌のバランスの乱れがIBSの主な原因ではないかと考えられるようになりました。
腸内細菌の乱れは、食中毒だけでなく、抗菌薬の投与や、強力に胃酸を抑えるお薬を飲み続けることによっても起こります。
しかも、「ストレス」そのものが腸内細菌のバランスを変化させ、腸の粘膜透過性の亢進と内臓視覚過敏を引き起こすことも分かってきました。
腸内細菌は、本当にさまざまな全身の病気に関係しているのです。
西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ