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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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胃腸内科 / 内視鏡内科

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IBDの治療:専門家のノウハウ

IBDの治療:専門家のノウハウ

兵庫医科大学の炎症性腸疾患(IBD)内科で勤務していた時には、週2回(土曜日は1・3週のみ)の外来でおよそ400名のIBD患者さんの診察を担当していました。

クリニックを開業した当初から、引き続き診療を続けさせていただいているのがその内の250名。

日本有数の患者数を誇る大きな病院から小さなクリニックに移ることには少なからず不安もあったかと思います。「大学病院」という看板ではなく、主治医である「わたし」を選んで付いてきていただいたみなさまには感謝の気持ちでいっぱいです。

もちろん、もしもCT/MRI、小腸内視鏡などの検査や入院治療が必要になった際には大学病院としっかり連携を取っていますので、ご安心ください。

 

さらに、開業後にもIBD患者さんは徐々にですが増えてきています。

今年の1月から5月の間にクリニックで診療したIBD患者さんは300名(潰瘍性大腸炎(UC)261名、クローン病(CD)39名)となりました。

 

新たな患者さんには、クリニックで診断した初発のIBD以外にも

・ご自身でインターネットで探して受診された方

・消化器の先生からご紹介いただいた方

など様々ですが、多くの方がこれからの見通しが立たないこと、病状が安定しないこと、今使用している薬で大丈夫なのかといった不安を抱えながらクリニックに来られます。

 

IBDの患者さんは、若い方が多いのが特徴の1つです。

学校、受験、就職、仕事、転勤、結婚、出産、子育てなど、ストレスや不安が付きまとう数々のライフイベントを、難病とうまく折り合いを付けながら乗り越えていかなければなりません。

一口にIBDと言っても、このように背景も違えば病状も違いますので、同じ潰瘍性大腸炎やクローン病という病名でも、病気を安定させるために必要な治療法はそれぞれの患者さんで随分と異なります。

 

実際、IBD患者さんに使うお薬の種類や量の組み合わせは何百通りにもなります。

その中で「その人に最適な治療をいかに見つけるか」が専門家の腕の見せ所です。

ちなみにIBD専門医という認定資格は今のところなく、あくまで「自称」専門家なのですが・・・。

 

さて、IBDの治療法はここ数年で劇的に進歩しました。

とくに外来で、クリニックでできる治療の選択肢が格段に増えました。

 

ただ、次々と登場する新薬も含めて、それぞれの治療方法の特徴をしっかりと把握して使いこなすことは、IBDの専門家でもそう簡単な事ではありません。

 

病状やライフスタイルに合わせてどのお薬から最初に使うべきなのか、

いつ治療の効果を見極めるべきなのか、

効かなかった時に次にどうするべきなのか、

コロナ禍の中で安全に治療するためには何を優先すべきなのか、

・・・どれも教科書や治療指針には詳しくは載っておらず、経験と最新の情報収集がものを言います。

 

治験などから得られる科学的な根拠はもちろん大切なのですが、今のところ実際に治療を試してみないと、どの「治療」がどの「人」に合うのかどうかは分かりません。

ですから、患者さんに「この治療にしなさい!」なんて、一方的に押し付けることは致しません。

各種治療法のメリットだけでなくデメリットも伝え、そして患者さんの好みや希望にも沿って、一緒に相談しながら治療を選んでいきます。これを、最近では「Shared Decision Making(共有意思決定:SDM)」と呼び、治療の選択肢が増えたIBDの世界でも浸透しつつあります。

 

同じような症状、内視鏡で見た炎症の程度もほとんど同じという人であっても、ある治療薬が劇的に効く人もいれば、全く効かない人もいます。

「これぐらいの軽い炎症ならこの薬は間違いなく効くだろう」と予測して始めても、ちっとも良くならない・・・本当に不思議です。

 

これは、おそらく同じ病気、同じ見た目でも、「病態」が違う、つまり病気を作り出している根本のところが個々の患者さんで違うことを意味しているのだと思います。

何をやっても炎症が治まらなかった方が、新しく始めた薬がピタッとはまって今までが嘘のように病気が落ち着くということも珍しくありません。

作用が異なる新しいお薬が出て来るたびに、わたしたち医師が今まで思っていた以上に、IBDの患者さんの病態が実に多様であることに気付かされています。

そして、治療の選択肢=病気と闘うための武器の種類が増えたことは、間違いなくより多くの患者さんを救うことにつながっています。

「新たな武器」は今年から来年中にもまたいくつか増える予定です。

 

研究が進んだ将来にはどのドクターが診ても、

「このIBD患者さんにお薬が効く確率は、A薬が90%、B薬が70%、C薬が50%・・・おすすめはAです!」・・・なんてAIが教えてくれる時代がきっと来るのでしょう。

ですが、もしそんな時代が来ても、AIでは患者さんの性格や置かれている生活環境、精神的・経済的な問題などにまで細やかに気を配ることはできないでしょう。

専門家のノウハウが必要とされる時代が、もうしばらくは続くのではないかと思います・・・たぶん・・・きっと。

 

クリニックでは、今受けている治療に不安がある方のセカンドオピニオンや、病気が落ち着いているから治療を減らしてみたい・・・などなど、どのようなご相談でもお受けします。

 

IBDの患者さんにわたしたちのクリニックを選んでよかったと思って頂けるよう、スタッフともどもこれからもがんばります。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ