ビタミンの補給で胃がんが減る!?
阪神優勝に浮かれ切った日本シリーズのブログで、もはやすっかり忘れ去られていると思いますが、先々週のブログは「ベジタリアン食の方はそうでない方より胃がんのリスクが約6割も減る!」という内容でした。
「胃がんになるのは嫌だけど、ベジタリアンは無理やなぁ・・・」
「肉をいっこも食わへんなんて、やっとれるかい!」
・・・ごもっともで。
では、菜食の代わりに胃がんのリスクを減らすものってないのか?
中国の研究グループから、こんな興味深い論文が報告されています。
Wen-Qing Li et al. BMJ 2019
研究の対象となったのは、胃がんリスクが高い地域とされる中国山東省の住民3,365例。
そのうちピロリ菌の抗体が陽性だった2,258例は、無作為に①ピロリ菌の除菌治療、②ビタミン補助、③ニンニク補助、およびそれぞれのプラセボに割り付けられました。
また、ピロリ菌の抗体が陰性だった残りの1,107例は、無作為に②ビタミンの補助、③ニンニクの補助、およびそれぞれのプラセボに割り付けられました。
①のピロリ菌の除菌は2週間の治療薬内服、②ビタミンの補助はビタミンC、E、セレンを、③のニンニク補助はニンニク抽出物とニンニク油を、各々1995~2003年までの7.3年の間投与されました。
ニンニクの効果を検証するのが、いかにも中国らしい。
さて、2017年までの合計22.3年の間、定期的に行った胃内視鏡検査で胃がんの累積発生率、さらに胃がんによる死亡をみた結果は・・・
ピロリ菌の除菌治療は、胃がん発生を有意に減少させ(オッズ比:0.48、95%信頼区間[CI]:0.32~0.71、p<0.001)、胃がんによる死亡を抑制していました。
まあ、これは言わずもがな。
ところが、ビタミンの補助でも、同じように胃がん発生が有意に減少し(オッズ比:0.64、95%CI:0.46~0.91、p=0.01)、さらに胃がんによる死亡も減っていたのです。
ニンニクの補助については、胃がんの発生では有意な抑制効果を認めなかったものの、胃がんによる死亡については有意に抑制していました。
たった2週間の治療で、その後の22年に渡って胃がんの発生を抑えるピロリ菌の治療はもちろんすごいのですが、いわゆる栄養補助食品にも胃がんの抑制効果が科学的にはっきりと証明されたわけですから、バカにできません。
わたしは、ビタミンなどのサプリメントを人生で一度も飲んだことがない人ですが、ちゃんと意味があるなら、飲んでもよいかなぁ・・・と思ったりしています。
しかし、毎日毎日7年間は・・・やっぱり、飲まれへんな・・・。
野菜をしっかり摂って、肉をちゃらにするしかないわ。(ならんけど)
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医