赤身肉で大腸がんになる?
世界中で行われた研究の結果から、「赤身肉」の摂取は大腸がんができやすくなる危険因子であることが分かっています。
「えっ!赤身肉ってヘルシーだと思ってた!」
「じゃあ、脂身の多い霜降り肉やったら大丈夫なんや!」
・・・と、どえらいポジティブ?な勘違いをされる方もおられますが、決してそうじゃありません。
ここで言う「赤身肉」とは、脂肪が少ないヒレ肉やモモ肉のことではなく、「牛肉、豚肉、羊肉、馬肉、猪肉」などの「見た目が赤いお肉(Red meat)」のことを指します。
脂身が多い肉を食べると大腸がんや乳がんのリスクが上がることも研究で明らかになっていますので、「赤身肉+脂肪」が組み合わさるカルビや霜降り肉はなおさらに悪いのです。
では、なぜ赤身肉が大腸がんの発生を招くのでしょうか?
肉の赤色はヘム鉄に由来しています。
ヘム鉄とはタンパク質と結合した状態の鉄分で、体への吸収率が高く、うまく適量を摂取すれば貧血の予防や改善に繋がります。
ところが過剰になると、ヘム鉄は酸化ストレスによる組織障害を引き起こし、大腸がんのリスクを上げてしまうことが実験でわかっています。
また、動物性脂肪が消化・吸収される過程で生じる二次胆汁酸や、お肉を高温で焼いたときの「焦げ」に含まれるヘテロサイクリックアミンには発がん作用があり、これらが合わさって大腸がんの発生を招くのです。
甘辛いタレがかかった表面が香ばしく焼け、噛むと中から肉汁があふれる焼肉をビールでゴキュッと流し込む・・・最高なんですけどねぇ。(←酒と一緒はさらにあかんやつ!)
残念ながら、大腸にとっては最悪なんですよ。
実は、同じお肉の中でも「鶏肉」は、ヘム鉄や脂肪が少なく、良質なタンパク質を多く含むために、がんのリスクを上昇させることがないだろうと言われています。
その一方で、さらにやばいヤツが、赤身肉に発酵、燻製、塩漬けなど保存用の処理を施した「加工肉」。
ハム、ベーコン、ソーセージ、コンビーフ、ビーフジャーキーなんかがそうですね。
加工肉には、赤身肉に加えて腐らないようにするために硝酸塩や亜硝酸塩といった発がん性がある添加物が使われており、十分な疫学研究の証拠に基づいて「人に対して発がん性がある(Group1)」と判定されています。
ベーコンエッグ、ソーセージとビール、生ハムとワイン・・・全部好物やん。
そんなん言われたら、もう食べれへんやん。
ああぁぁん・・・( ;ㅿ; )
・・・と、それほどネガティブ(←だれが「根がデブ」やねん)には考えなくても良いのかもしれませんよ。
実際に、日本人で赤身肉や加工肉の摂取が大腸がんのリスクになっているのかどうかを調べた研究があります。
国立がん研究センターが2011年に発表した日本人の男女約8万人を追跡した調査によると、
「赤肉の摂取量が多いグループ(約80g/日以上)で女性の結腸がんのリスクが高くなった」
「肉類全体(鶏肉も含む)の摂取量が多いグループ(約100g/日以上)で男性の結腸がんリスクが高くなった」
という結論が得られています。
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2869.html
加工肉については、男女ともに大腸がんとの明らかな関連はみられませんしたが、摂取量を細かく10段階に分けて検討したところ、男性の最も摂取量の多い群で、結腸がんリスクの上昇がみられました(摂取量の少ない下位10%と比べて、上位10%では発生率が1.37倍)。
・・・なるほど。
たしかに日本人でもリスクは上がるのですが、それは毎日かなりの量を食べている「肉好き」の人だけの話。
もともと、日本人の赤身肉や加工肉の摂取量は世界と比べると少なく、2013年の調査では、一日あたりの平均摂取量は63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)でした。
つまり、欧米人並みにかなりの量の肉を毎日毎日食べるような極端な生活をしなければ、一般的な日本人ではそれほど大きなリスクにはならないとも言えます。
とは言え、油断は禁物!
加工肉25gって、薄切りベーコン1枚またはスライスハム1枚の量です。
たったの1枚ですよ!
1日平均13gなんて、油断していると余裕でぶっちぎっちゃいます。
(英国の報告では、1日あたり加工肉25gを摂取するごとに大腸がんのリスクが20%上昇すると報告されています)
食事は、バランスよく、満遍なく。
赤身肉も加工肉も食べて良いけど、鶏肉も、魚も、米も、野菜も、果物も、発酵食品も食べ、できることなら不要な添加物は避ける。
大腸がんの予防に限らず、すべてにおいてこれが肝心です。
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医