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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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コロナの行く末

コロナの行く末

決勝戦まで大いに盛り上がったカタールワールドカップですが、観客席で目だったのはサポーターの誰しもがマスクを付けずに大声で応援していること。

すっかりコロナ禍前の世界に戻ったかのようです。

 

マスク着用の義務を撤廃し、言わばノーガード戦法に打って出たイギリスやアメリカなどでも、大きな流行の波はもはや起こっていません。

かたや、日本は第8波の真っただ中。

人口100人あたりのワクチン接種回数が世界最多であるにも係わらず、いまだにマスクをしていないと白い目で見られる状況に置かれたままです。

感染者数が7波を超えるのでは・・・との予想も出ています。

いったいなぜ、国ごとにこんなにも大きな「差」が生まれてしまったのでしょうか?

 

ここからは、あくまで感染症が専門ではない一消化器内科医の私見としてお読みください。

 

わたしは、この「差」は、おそらくこれまでにコロナに罹った人の割合の差なのだろうと推察しています。

 

第8波直前の2022年11月初め、厚生労働省が献血した16歳〜69歳の8260名を対象に行った調査によると、コロナに感染した人だけが陽性になるN抗体の保有率は26.5%との結果でした。

 

また、この抗体の保有率は地域で大きく異なり、最高の沖縄県46.6%をはじめ、大阪府40.7%、京都府34.9%、東京都31.8%、兵庫県30.0%などの都市部で高く、長野県9.0%、徳島県13.1%などで低いという結果でした。

 

つまり、日本人全体としてはおよそ4人に1人が、流行が顕著だった都市部では2人〜3人に1人程度が、すでに新型コロナに感染したということになります。

 

2022年2~3月に行われた同様の調査では、東京都で5.65%、大阪府で5.32%にとどまっており、夏の第7波を経て抗体保有率が大幅に上昇しました。

 

ただ、アメリカやイギリスと比較すると、この抗体保有率はまだまだ全然低いのです。

 

現在のイギリスのN抗体の保有率は、8割を超えています。

つまりは8割の国民が、すでにコロナに罹っちゃったということ。

オミクロンが大流行した2020年初め以降、抗体保有率が20%から80%に上昇していることから、その多くはオミクロン株の感染爆発で得た抗体だと考えられます。

また、ワクチンの接種で得られるS抗体の陽性率も90%を超えていますので、現在のイギリスでは、ほとんどの人がワクチンによる抗体+感染による免疫で作られた抗体のハイブリッド免疫を持っていることになります。

これがノーガードでも、感染の新たな波が起きていない正体なのではないでしょうか。

 

この状況はアメリカも同様。

米疾病対策センター(CDC)が2022年4月に公表した抗体保有率は、米国人全体で57.7%、未成年では約75%でした。

この時点ではイギリスよりもまだ低く、この後夏にかけて感染者はそれなりに出ていますが、大きな波は起きていません。

 

この状況から見えてきたのは、

・残念ながらワクチン接種だけでは感染の流行は防げない

・感染による免疫の方がワクチンによる免疫よりも強い

・つまりは、国民の7-8割程度が感染して集団免疫を獲得しないとコロナは収束しない

ということではないでしょうか。

(ゼロコロナ政策を強行に進めてきた中国もついに方向転換しましたね)

 

これを裏付けるように、日本の第8波においても、抗体の保有率で波の大きさにかなりの地域差がでています。

2人に1人がすでに感染している沖縄では、今のところ「さざ波」程度。

一方で、抗体の保有率が最低だった長野県では、第7波を超える感染の「大波」が起きています。

地方都市で感染率が高いのが、第7波までとは大きく異なる今回の第8波の特徴です。

 

じゃあ、今まで頑張ってきたワクチン接種やマスクにまったく意味がなかったのか?・・・というと、決してそうではないとも思っています。

 

イギリスにおける人口あたりの新型コロナによる死亡者数は、日本のおよそ8倍。

多大な犠牲の上に、今の状況があるのです。

 

当然ながら、感染によって自然免疫を獲得するには後遺症なども含めて犠牲が伴います。

重症化率が高く、治療薬も乏しかった時を、ワクチンと感染予防で乗り切ったからこそ、日本はこれまで大きな犠牲を払わずに済んでいるのだと思います。

 

オミクロンに変異して重症化率は下がったものの、

「海外と同じように、マスクなんていらんやろ!」

「ワクチンも意味ないし、もう止めや!」

・・・お気持ちはよく分かりますが、一気に舵を切りすぎると、感染が爆発して救える命も救えなくなるかも知れません。

 

重症化リスクの高い人については、ワクチン接種をアップデートした状態で保つということに、未だにそれなりの意味があるのではないかと思っています。

 

逆に、それ以外の方にとっては、ワクチンが持つ意味が薄れているのも事実。

重症化因子を持っていないわたしも、夏に4回目のワクチンを接種して以降、今のところ追加接種は予定していません。

 

できれば感染したくない・・・

でも感染しないと終わらない・・・

そして被害は最小限に留めたい・・・

なかなか難しい課題ですが、どうやらただ単にワクチン接種を進めるだけの政策では解決しそうにありません。

恐らくは、このままでも第8波が落ち着く頃には都市部では抗体保有率が6-7割に至り、ウイルスの大きな変異が生じない限りは感染の爆発は起きなくなるのではないかと想像していますが、どこかで割り切って感染対策を緩めないと、イギリスやアメリカのようになるにはまだまだ時間がかかるでしょう。

 

わたしが今後の日本の落としどころとしてイメージしているのは、フランスにおける感染の波。

こんな感じで、犠牲者が増えない程度の小規模な波が徐々に低くなり、最終的に日本全体の抗体保有率が7割程度になったらすべてをコロナ禍前の生活に戻す。

 

そんな行く末を思い描いています。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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