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日本人の胃は変わった?その①胃酸の分泌

日本人の胃は変わった?その①胃酸の分泌

日本人は、欧米人と比べて胃酸の分泌が少ない人種です。

 

・・・いや、「です」ではなく「でした」の方が、今では正しいのかも知れません。

 

実は、日本人の胃酸の分泌量は、どんどん増えています。

1970年代と1990年代の日本人の胃酸分泌能を比べると、なんと2倍!に増えています。

そこからさらに30年経っていますので、欧米人と肩をならべている可能性があります。

では、なぜこんなにも短い期間に、日本人の「体質」が劇的に変わったのか?

 

その理由は2つあります。


① ピロリ菌の感染が減った

 

ピロリ菌は幼少時に口から感染し、慢性胃炎を引き起こす菌です。

胃の炎症が続くと、時間の経過とともに、胃酸を分泌する細胞が減っていきます。

かつての日本は、欧米と比べて衛生状態が良くなく、ピロリ菌に感染しているのが言わば「当たり前」でした。

ですので、年齢が上がるにつれて慢性胃炎によって胃酸が減ることが普通だったのです。

 

今の日本は、衛生環境が良くなり、ピロリ菌に感染する機会が劇的に減りました。

ピロリ菌の感染率は年齢が若い層から順次減ってきており、10歳〜20歳代では10%以下になっています。

 

ピロリ菌の感染していない胃は、老けません。

高齢になっても、胃酸を分泌する機能がほとんど低下しないのです。

 


② 食生活が変わった

 

かつての日本人の食事は、お米(糖質)が中心で、脂肪は少なく、タンパク源は主に魚、また調味料(味噌、醤油)や食品の保存(漬物や干物)のために多くの塩を使っていました。

 

実はこの食生活は、どれも胃酸の分泌が減る方に働きます。

 

魚に含まれる魚油は、胃酸の分泌を抑えることが報告されています。

塩の過剰な摂取は、胃の粘膜を傷害し、炎症や萎縮を引き起こします。

萎縮が進むと、胃酸の分泌は衰えていきます。

 

今の日本人の食生活は、かつてと大きく様変わりしました。

いわゆる欧米型の食事で、お米や魚を食べなくなり、動物性の蛋白と脂質が増え、塩分は減り、お酒の量は増えています。

 

今の食生活は、どれも胃酸の分泌を増やす方に働きます。

 


このように、最近の日本の衛生環境や食生活は、すべてが胃酸の分泌を増やす方向に働いています。

実際に、ピロリ菌に感染していても感染していなくても、高齢であっても若者であっても、以前と比べて日本人の胃酸の分泌が増えていることが報告されています。

 

では、胃酸が増えたことで何か体に不都合があるのでしょうか?

何回かに分けて、お話しします。

 

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日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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