治療は始めたらやめられない?
「血圧がかなり高いですね。血圧を下げる治療を始められた方が良いですよ。」
とお話しすると、決まって返ってくるのが
「先生、血圧のお薬って一度始めたら一生やめられないんでしょ?」
というご質問。
降圧剤を飲めば血圧は下がります。
ただし、それは高血圧という「結果」に対してお薬が効いているだけであって、肥満や塩分の摂り過ぎ、喫煙や運動不足といった血圧を高める「根本の原因」を解決してくれている訳ではありません。
ですので当然、薬をやめると途端に元通りの高血圧に戻ってしまいます。
高血圧を治療する目的は、将来的に脳梗塞や心筋梗塞、認知症にならないように予防することですから、ずっと薬を飲んで血圧を下げ続けないと意味がなくなってしまいます。
クリニックが儲かるからずっと薬を出している・・・という訳では決してありません。
ですが、逆に言うと「根本の原因」さえ解決すれば、薬を減らす、あるいはやめられる可能性が十分にあるということです。
ダイエットや減塩、禁煙やウォーキングなどの運動を続けて血圧を根本から下げることができれば、薬は必ずしも必要ありません。
これは、多くの胃腸の病気についても当てはまります。
例えば、胃食道逆流症や逆流性食道炎という病気。
「胸やけや喉がつかえる感じ」を訴えてクリニックに来られる方はたくさんおられます。
胃酸が食道に逆流することが主な原因ですので、胃酸を抑えるお薬を飲んでいただくと症状は良くなります。
ただし、お薬をやめると胃酸の分泌は元通りに戻ります。
症状が再発してしまう方も少なくありません。
やはり、大切なのは「根本の原因」を解決することです。
胃酸過多になり食道に逆流してしまう「根本の原因」は、早食い、食べ過ぎ、不規則な時間の食事、寝る前の食事、お酒の飲み過ぎ、肥満、運動不足、前かがみの姿勢、ストレスなどです。
とくにストレスは「喉がつかえる感じ」も悪化させてしまいます。
患者さんに詳しくお話を伺うと、
「コロナが流行ってから運動不足でお酒もよく飲むので、体重が10kg増えました。」
「小さい子供がいるので、いつも食事はかき込むように急いで食べています。」
「仕事の終わりが遅くて、夕食は20時ごろ。2時間もしないうちに横になります。」
「事務仕事でパソコンの前でずっと前かがみ。夕方になるとお腹が張ってきます。」
「仕事や人間関係の悩みが常にあります・・・」
などなど。
はい、それが原因です。
「ストレスはとくにありませんよ。」とおっしゃる方でも、詳しくお聞きすると
「コロナの前まではよく体を動かしていたのですが、今はできるだけ外出しないようにしています。」
「主人がテレワークで家にいるので、静かにしていないといけないです。朝から「今日のご飯は何?」とか聞かれます・・・。」
といったお話も。
ご本人には自覚が無いのかもしれませんが、これらは間違いなくストレスです。
ストレスとは、何も「辛い・・・」と感じることだけではありません。
今まで普通にできていたことが思い通りにできなくなったということだけでもストレスで、体に不調を来す十分な原因になります。
コロナ禍の中、胃腸の不調を訴える方が増えるのも無理はありません。
繰り返しになりますが、お薬による治療は辛い症状を和らげるためには有効ですが、根本から解決してくれるわけではありません。
普段の生活を自ら見つめなおし、適度な運動、ストレッチ、規則正しい食事、食べてすぐ横にならない、よく噛んでゆっくり食べる、上手に気分転換してストレスを発散するなど、できることから少しずつ変えていくことがとても大切です。
そうすれば、お薬を減らしたりやめても症状がぶり返すことは少なくなるでしょう。
もちろん「分かっちゃいるけど、そう簡単にはいかないよ・・・」という方もおられます。
ストレスゼロなんていう生活も、現実的には無理でしょう。
そういった方には、困った症状がでない最小限のお薬でしばらく維持することも必要です。
根本的な解決を気長に目指しながら、病気とうまく付き合いましょう。
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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ