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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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食べることと出すこと

食べることと出すこと

「食べて出す」という人が生きていくうえでごく当たり前のことが、突如うまくできなくなってしまったら、いったいどんな感情が湧いてくるのか。

 

わたしとほぼ同時期に明石市であんどう消化器内科IBDクリニックをご開業された安藤純哉先生が、ブログで紹介されていた「食べることと出すこと」頭木 弘樹(著)(医学書院)という本に興味を持ち、早速読んでみました。

 

大学生の時に潰瘍性大腸炎を患い、長く壮絶な闘病生活を経て大腸全摘術を受けた筆者が語る、いわゆる「闘病記」です。

 

しかし、他の闘病記と一線を画するのは、病気に係わるさまざまな体験やその時に湧いてきた感情が、文学作品や映画のセリフを引用しながら明確に「言語化」されていることです。

 

患者さんがわたしたち医療従事者、あるいは周りの家族や友達に語ってくれる気持ちは、ほんの一部にしか過ぎません。

例え伝えたくても、説明したくても、そうすることが難しい感覚や感情もきっとあります。

 

この本を読んで、「なるほど。こんな風に感じていたのか・・・」と、患者さんの秘めた思いや抱いていた感覚について、初めて理解できたことが多々あり、衝撃を受けました。

 

これまでたくさんの潰瘍性大腸炎の患者さんを診てきて、「きっとこうだろう」となんとなく「分かった気」になっていただけで、思いが至っていたのはごくわずかだという事実を思い知らされたのです。

 

ご興味のある方、とくにIBD患者さんに関わる医療従事者、患者さんご自身、そしてそのご家族の方々にも本を手に取ってゆっくりと読んでいただきたいのですが、印象に残った文章を少しだけ紹介させていただきます。

 

 

食べないことを許す人は、本当に少ない。

 

長く病気をしている人間の、いちばんの願いは、病気が治ることだが、次の願いは、ほんのいっときでいいから「病気の休み」が欲しいということではないだろうか。

 

治らない病気になると、病気と「闘う」のではなく、病気とうまく「付き合う」ようにしろと言われる。しかし、どうもこれには納得できない。だって、付き合いたくないのだ。

 

内臓の病気となると、たちまち、心のせいにされる。

 

つまり、そういう性格だから、その病気になったのではなく、その病気だから、そういう性格になったのである。

 

病気をすると、幸福のハードルがすごく低くなる。こんなにも幸福を感じる生活は、幸福ではないのでは、という矛盾した気持ちを抱えている。

 

 

今のように治療の選択肢がなく、悪くなったらステロイド治療、さらに悪くなったら入院して絶食、それでもダメなら手術・・・という時代の闘病記ではありますが、そこには潰瘍性大腸炎の患者さんだけではなく、すべての患者さんが抱える普遍的な感情が詳細に書かれています。

 

患者さんにとっては、「そう、そう!」と共感することが多いのではないでしょうか。

 

病気になり、今まで意識することもなかった当たり前のことができなくなるという体験について、このように言葉にして伝える人がいなければ、病気の当事者と周りの人の間には、「なってみないと分からない」という絶対的な壁が永遠に立ちふさがってしまいます。

 

「病気とうまく付き合いましょうね。」「落ち着いていたらなんでも食べてもいいよ。」なんてセリフは、患者さんに何度言ったか分かりません。

励ますつもりでかけていた言葉で、もしかしたら傷つけたり、戸惑わせたりさせていたかも知れない・・・というところまでは、思いが至っていませんでした。

 

「患者さんに寄り添う」ということは長年医療に携わっていても簡単ではありませんが、この本をきっかけに、さらにもう一歩、少しでも、想像力を働かせられるようになっていきたいと思います。

 

たくさんの気付きを貰える、今読んでよかったと思える本でした。

スタッフみんなで共有したいと思います。

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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