食べてケアするIBD~腸がよろこぶ食事とは~④
前回は、IBD(炎症性腸疾患)の患者さんの「食事」に関する研究がいかに難しいかについてお話ししました。
しかし最近では、海外から新たな食事療法の効果を示す研究結果が、少しずつですが報告されてきています。
その中で、特に注目されているのが 「地中海食」 です。
地中海食とは、地中海沿岸(ヨーロッパ、中東、北アフリカ)の伝統的な食習慣で、以下のような特徴があります:
・果物や野菜をたっぷり食べる
・オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒穀物をよく使う
・肉や乳製品は控えめで、魚介類を多く食べる
・食事と一緒に適量の赤ワインを楽しむ
この食事スタイルは、クローン病の発症を防いだり、IBDの症状を和らげる効果があることが報告されています。
さらに、糖尿病などの生活習慣病、認知症、パーキンソン病といった病気の発症を予防する効果や、美容面にも良い影響があるとも言われています。
その理由は、地中海食に多く含まれるオリーブオイルの不飽和脂肪酸や、野菜・果物に含まれる抗酸化成分などが身体に良い働きをし、逆に身体に悪影響を及ぼす飽和脂肪酸を多く含む肉類や乳製品の摂取を控えることで、さまざまな病気を防いでくれるものと考えられています。
でも、実際のところ、日本の食生活に地中海食をそのまま取り入れるのは少しハードルが高いかもしれません。
例えば、地中海食のピラミッドでは:
・牛肉や豚肉、お菓子の摂取は「月に数回」
・鶏肉や卵、乳製品の摂取は「週に数回」
とされています。
「えっ、それって毎日食べてるよ!」という方も多いのではないでしょうか?
確かに、日本の伝統的な和食も、地中海食と並んで健康的で長寿につながる食事として知られていますが、現代の和食は食材や調理法が大きく変わってきており、昔ながらの和食とは異なっています。
いきなりすべてを変えるのは大変です。
まずは、まずは“ちょっとだけ”取り入れることから始めてみるのはいかがでしょうか?
例えば:
・普段使っている植物油をオリーブオイルに変える
・お菓子の代わりにナッツや果物を食べる
・肉の量を減らし、魚や海藻類、野菜を意識して摂る
・毎日のビールを控えて、ワインを少しずつ楽しむ
・・・これなら、無理のない範囲で取り入れることができます。
ただし、注意が必要な場合も。
クローン病で腸に狭窄がある方などは、野菜や果物、ナッツ類の食べ方に注意が必要です。調理の工夫や医師のアドバイスを取り入れながら、無理のない範囲で進めてください。
地中海食の良いところを上手に日常の食事に取り入れることで、IBDの症状が落ち着くだけでなく、将来的な生活習慣病の予防にもつながるかもしれません。
まずは一歩、始めてみませんか?
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医
日本炎症性腸疾患学会IBD専門医・指導医