花粉症と食物アレルギーの意外な関係
スギやヒノキ花粉が飛散する時期が終わり、ズルズルの鼻水や目のかゆみに苦しめられていた花粉症の方々は、やっと一息付けたという感じでしょう。
今年はとくにひどい症状の方が多かったですね。
えっ、わたし?
幸い今のところ発症しておりません。
花粉に対して抗体を作らない免疫が鈍感なタイプの人間・・・なんだと勝手に思いこんでいるのですが、ある日突然抗体の生成量が体の許容量を超えて発症!とならないことを祈るばかりです。
今や花粉症は、日本人の2人に1人が発症する国民病と言われており、大人だけでなく子供にも増えています。
ところが、わたしが子供の頃は花粉症の人なんて、周りにまったくと言ってよいほどいませんでした。
スギやヒノキなんて日本に昔からある木なのに、なぜ今になって花粉症がこんなに急増しているか?
・・・不思議に思いますが、大気汚染や食生活の変化の影響など諸説あるものの、まだよく分かっていないようです。
さて、胃腸科のわたしがどうして花粉症の話をするかというと、あまり知られていませんが実は、花粉症が「食物アレルギー」とも関連しているからです。
花粉症の患者さんが「生の野菜や果物」を食べた時に、口やのどのイガイガ感やかゆみ・腫れなどのアレルギー症状が起こることがあります。
これを「花粉食物アレルギー症候群」と言います。
普通は口やのどの症状に留まりますが、ひどくなると蕁麻疹や顔の腫れ、涙、鼻水、息苦しさ、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状まで引き起こすこともあります。
なぜこんなことが起きるかというと、食べ物の中に花粉に含まれるアレルギーの原因(アレルゲン)とよく似た構造のものが含まれているためです。
体が花粉に対して作った抗体が、よく似たアレルゲンを持つ食べ物に対して、間違って過剰な免疫反応を引き起こす「交差反応」によってアレルギー症状が起きてしまいます。
例えば、花粉症で真っ先に思いつく「スギ」花粉症の患者さんは、生の「トマト」でアレルギーを起こすことがあります。
トマトには、スギ花粉に含まれる抗原と似た構造を持つタンパク質が含まれていることが分かっています。
トマトのアレルゲンは加熱処理すると失活するため、ケチャップやトマトソースなどの加工品では症状が出ないことが多く、また、スギ花粉症の人でも生のトマトを食べても何ら問題がない方も多数いらっしゃるので、症状が無ければ過度に気にする必要はありません。
他にも、花粉の種類によって、交差反応を起こす食べ物が異なります。
・カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ):飛散時期 1~5月
→バラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボ、ビワ、イチゴ、ナシ)、マメ科(大豆(主に豆乳)、ピーナッツ)など
・イネ科(オオアワガエリ、カモガヤ):飛散時期 4~10月
→ウリ科果物(メロン、スイカ)など
・キク科(ブタクサ、ヨモギ):飛散時期 8~10月
→セリ科野菜(ニンジン、セロリ、三つ葉、パセリ)など
クリニックの初診時問診票のアレルギーの欄に、薬だけでなく果物や野菜のアレルギーについて書いている方が、実は結構いらっしゃいます。
意外と知られていない花粉症と、食物アレルギーとの関係。
もしかしたら時々突発的に起こる胃腸の不調の原因は、アレルギーのある食物を知らず知らずのうちに食べているからかも知れませんよ。
花粉症の方は、一度食べ物アレルギーについても意識してみてください。
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医