胃は本当は「がん」になりにくい臓器です
えっ? 胃がんってよくあるがんじゃないの?
・・・と、お思いかもしれませんが、間違いなく胃は本当はがんになりにくい臓器です。
以前に胃がんに係わるヘリコバクター・ピロリ菌のお話を書きましたが、ピロリ菌のいない胃にはがんはめったに発生しません。
胃がんの患者さんを調べると、ピロリ菌の感染がない方は1%と極めてまれです。つまり99%の胃がんはピロリ菌の感染による慢性胃炎が関連しています。
「火の無いところに煙は立たない」ように「ピロリの居ないところに胃がんはできない」のです。
実はピロリ菌による胃炎に限らず、菌やウイルスなどの感染によって炎症が長く続いている場所では、細胞の遺伝子に傷がついてがんが出来やすくなります。
これを「炎症性発がん」と言います。
ピロリ菌による胃がんの他にも、肝臓がんの多くはB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎が原因であることが分かっていますし、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの感染による炎症が原因です。
この3つの感染による「炎症性発がん」で、日本人のがん全体の実に25%を占めることになります。
つまり、胃も肝臓も子宮頸部も感染による炎症さえなければ本来はがんになりにくい臓器であり、菌やウイルスの感染を無くしてしまえば日本人のがんの4分の1は撲滅できるのです。
検査でピロリ菌がもともと感染していないと分かった方は、将来胃がんになる可能性が極めて低いわけですから、毎年毎年がんばって胃カメラを受ける意義は、実はほとんどありません。
ただし、ピロリ菌がいなくてもお酒やたばこを吸われる方の場合は、のどや食道のがんを早期に見つけるという別の目的での意義はあります。
また、ピロリ菌の除菌治療を受けた方も、今は菌がいなくなっていても過去の炎症によるダメージは消えないので、胃がんの早期発見のために胃カメラを定期的に受けることが推奨されます。
一方で、大腸は炎症性腸疾患という特殊な病気の方を除いて慢性の炎症が無いにも関わらずがんができやすい臓器ですので、ピロリ菌がいない方にとっては、胃カメラより大腸カメラを受ける方がよほど大切です。
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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ