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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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環境がきれいな方がIBDが増えるって本当??

環境がきれいな方がIBDが増えるって本当??

かつて炎症性腸疾患(IBD)はまれな病気でした。ところが今や日本の潰瘍性大腸炎の患者さんは22万人、クローン病の患者さんは7万人以上いると推定されています。

昔と今では何が変わったのでしょうか?食生活はもちろんですが、一番大きく変わったのは衛生環境です。

衛生環境が整っていなかった戦後の日本は、結核や寄生虫などの感染症が蔓延していました。1970年を過ぎ、衛生環境が整ってくると感染症は減りましたが、喘息、花粉症、アトピーなどのアレルギー疾患が急に増えました。そしてIBDは、1980年代から増え始めます。

衛生環境が良くなるとアレルギーの患者さんが増えるのはなぜなのでしょうか?

1989年にイギリスのストラカン博士が「衛生仮説」という興味深いアレルギーの発症に関する考えを提唱しています。兄弟姉妹の数が多い家庭の子どもや家畜を飼っている農家にはアレルギー疾患の発症が少ないという疫学の調査から、乳幼児期の衛生環境が免疫の発達にとても大事で、その人が将来アレルギーになりやすいかどうかを決めているのではないかという考えです。

じつは、乳幼児期にたくさんの菌に曝されていた人は、アレルギーだけでなくIBDにもなりにくいことが分かってきています。


昔は家の周りに山や川、田んぼなどの土壌があり、遊んでいるだけで体内に多種多様な菌が入ってきました。腸などにある免疫細胞に、さまざまな菌の情報を自然にインプットできる環境だったのです。

わたしは1970年、高度経済成長期真っただ中の大阪万博が開催された年に生まれました。幼少時にはまだ家の周りに野原や田んぼや川があり、泥ダンゴを作り、バッタ採りやザリガニ釣りに駆けずり回っていました。そのような環境で育つと、免疫細胞がしっかりと発達し、有害なものとそうでないものを勘違いせずに見分けられるようになります。その結果として、アレルギー疾患やIBDを発症しにくい体質になるのです。

一方、現代は衛生環境が整備され、とくに都心はアスファルトやコンクリートだらけ。菌が生息する土壌はわずかしか残されていません。

しかも、この10年で世の中に除菌・抗菌を謳う商品が急速に広がりました。全ての菌が悪者のように扱われ、幼稚園の砂場でも「うちは抗菌砂を使っているので安心です!」…というご時世です。今のお子さんは明らかに度が過ぎた抗菌生活を送っています。

つまり、昔は自然にあった免疫細胞がたくさんの菌の情報をインプットする機会が、今は失われてしまっているのです。発達が不十分なままになってしまった免疫細胞は、良いものと悪いものを正しく見分けられず、花粉やホコリにまで過剰に反応し、アレルギー症状を起こします。

また、腸の免疫がうまく働かなくなると、本来栄養として取り入れるべき食事や、共存するべき腸内細菌に過剰に反応して、腸に炎症が起きてしまいます。これがIBDです。

感染症のリスクとバランスを取ることが大事ですが、少しぐらい「ばっちい」不衛生な環境の方がじつは病気に強くなるとも言えます。床に落とした食べ物は3秒ルールで食べてOK!ぐらいの、おおらかさがあっても良いのではないでしょうか。

2020年現在、新型コロナウイルスが猛威を振るっており、世界中がさらに一段と過剰な抗菌・除菌の道へ進もうとしています。もちろん、感染症が蔓延している時期の対策は万全でないといけないのですが、コロナ後の世界にIBDやアレルギーの患者さんがますます増えないかと心配しています。