毛細血管のいっぱい詰まっているところ・・・肝血管腫
- 2021年8月8日
- 肝臓の病気
関西人にとって「毛細血管がいっぱい詰まっているところ」と言えば・・・
はい、せーのーで、
「ワーキー(腋)!!」
・・・ですよね。
言わずと知れた吉本新喜劇の吉田裕さんとすっちーさんのコンビギャグ「ドリルすんのかいせんのかい(乳首ドリル)」(←これが正式名称らしい)の一節です。
「ワキやめろ! ワキやめろ! ワキやめろ!」
「毛細血管がいっぱい詰まっているところワーキー(腋)!!」 ×3回
・・・いや、展開が分かっていても何度見てもおもろい。
今や関西人には常識と思われるこのマメ知識ですが・・・
非常に残念なお知らせがあります。
実は「腋」は毛細血管がいっぱい詰まっているところではありません。
Wikipediaの「吉田裕 (お笑い芸人)」の項目には、
「人体の構造として、毛細血管が一番多いのは脳であり、その次に多いのは肝臓である。一方、腋部には本来であれば人体の深いところを通っている重要な血管や神経が浅いところを通っているため、このギャグは間違いである。しかしながら、それゆえに、腋は急所であるとも言えるため、「腋やめろ」というのは、むしろ、的確であるといえる。なお、本件について、吉田裕自身も、過去にメディアから取材を受け、その事実を認める趣旨の回答をしたことがあり、同時にギャグ自体は続けるとしたものの、「学校のテストには書かないように。中学の皆さんには注意を促したい」とするコメントを出している」
と、書かれてあります。
真面目かっ!(笑)
人体図で見ると、毛細血管はこんな感じ。
画像出典:NHKオンデマンド 美と若さの新常識~カラダのヒミツ~
うん。確かに「腋」には毛細血管はそれほど多くありませんね。
毛細血管とは、身体の隅々まで張り巡らされている直径約100分の1ミリという極細の血管で、全身の血管の実に95%を占めています。
毛細血管は、酸素や栄養素、ホルモンを全身に届けたり、二酸化炭素や老廃物を回収したり、熱を放出して体温を一定に保つなどの生命維持に大切な働きを担い、脳や肝臓だけでなく、腎臓、肺、腸、皮膚など全身の臓器を支えています。
ですので、「毛細血管の老化」によって血流が減ってしまうと、脳では記憶力の低下や認知症が起こり、肝臓や腎臓では老廃物の代謝や排泄機能が低下し、お肌においては「しみ・しわ・白髪」の原因になってしまいます。
見た目も体もいつまでも若々しく健全に保つためには、質の良い睡眠をとり、適度な運動をすることなどで毛細血管を元気に保つことがとても大切だと考えられるようになってきており、今、とても注目されています。
さて、わたしたち消化器内科の医師が多く診る「毛細血管がいっぱい詰まっているところ」と言えば、やはり肝臓です。
もともと肝臓自体が毛細血管の塊のような臓器ですが、その中でさらに無数の毛細血管が絡み合って数ミリから数センチ大の腫瘤状の塊ができることがあります。これが「肝血管腫」です。
血管腫ができる原因は良く分かっていませんが、生まれ持っての先天的な要素が強いとされています。
肝血管腫は良性の腫瘍であり、できても無症状です。多くは検診で受けた腹部超音波検査で偶然に見つかります。
ごく稀に大きくなったり、破れたりすることがあるために、念のため経過を診ることが推奨されていますが、ほとんどはサイズが変わることもなく、治療の必要もありません。
吉本の話に戻りますと、「毛細血管がいっぱい詰まっているところ肝臓!!」では、やっぱりゴロが悪いですね。
「乳首ドリルすな! 乳首ドリルすな! ドリルすな!すな!すな!すな!」
「つま先、アゴ、ワキやめろ!」
「ドリルせんのか〜い!」
の一連の流れ。関西人ならば一度は生で見ておきたい伝統芸能です。
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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ