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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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胃腸内科 / 内視鏡内科

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日本人の胃は変わった?その③胃・十二指腸潰瘍が減った

日本人の胃は変わった?その③胃・十二指腸潰瘍が減った

わたしが医師になったころは、

「胃が痛い」

「真っ黒の便が出た」

「黒っぽい血を吐いた」

といった患者さんに緊急で胃カメラをしてみると、胃潰瘍から今まさに血が噴き出してた・・・なんていう場面に出くわすことが珍しくありませんでした。

 

とくに冬場は、われわれ消化器内科医が恐れる?「潰瘍シーズン」。

寒さで胃粘膜の血流が悪くなるためか、潰瘍からの出血が多かった印象です。

ひとりで当直中の夜中に、吐下血の患者さんが来られると、それは、それは修羅場。

 

事務「吐血の患者さん来られまーす!」

わたし「はい!?」(マジで!?)

・・・えーと、内視鏡室のカギを開けて、カメラを準備して、止血の道具を取り出して、輸血部の電話番号は・・・いや、その前に助っ人の確保や!

後輩、なんなら先輩までかき集めて、緊急胃カメラで必死に止血処置。
ほっとする間もなく、終わったらカメラを洗って、内視鏡室を片付け、病棟で入院の指示出し。

で・・・気付けば、朝。(o´Д`)oオハヨォォォォ

なつかしい思い出です。

(当然、翌日もそのまま勤務続行!手伝いに来た人も無給!ブラックだねぇ・・・)

ところが最近は、この胃・十二指腸潰瘍を見る機会が明らかに減っています。

 

「胃が痛い」という訴えでクリニックに来られた患者さんに胃カメラをしてみても、実際に胃や十二指腸に潰瘍ができていたという方は、ほとんどおられません。

 

厚生労働省の調査によると、1987年当時の胃潰瘍の患者数は1年間で61万3000人でしたが、2011年には35万5000人にまで減っています。

十二指腸潰瘍は、1987年の患者数が23万7000人であったのが、2011年には4万2000人にまで減りました。

そこから11年経過した現在は、さらに激減しているものと推察されます。

 

ではなぜ、こんなに急激に日本人の胃・十二指腸潰瘍が減ったのでしょうか?

 

胃・十二指腸潰瘍の原因のほとんどは、「ピロリ菌の感染」または「痛み止め(非ステロイド抗炎症薬:NSAIDs)の服用」です。

これら2つの要因以外で潰瘍ができる頻度は、たったの2%。

極めて低いのです。

 

「潰瘍」と言えば「ストレス」と思われがちですが、実は純粋にストレスだけで胃や十二指腸に潰瘍ができてしまうことは、滅多にありません。

ピロリ菌による慢性胃炎で胃粘膜を守る力が落ちているところに、ストレスが加わることで胃酸の分泌が増え、潰瘍ができるのです。

 

前任の兵庫医科大学では、こんなデータがありました。

 

あの「阪神淡路大震災」が起こる前に、ピロリ菌を除菌していなかった胃・十二指腸潰瘍の患者さんは、震災で心的・肉体的ストレスがかかった結果多くの方が潰瘍を再発してしまったのに対し、震災前に除菌が済んでいた方は、同じようにストレスを受けても潰瘍がまったく再発しなかったのです。

 

ピロリ菌が胃に感染していることが、いかに潰瘍の形成に大きく関わっているかを如実に物語っています。

 

ピロリ菌が潰瘍の原因だと分かる前は、胃・十二指腸潰瘍の患者さんは胃酸を抑える薬を飲み続けていないと、すぐに再発するというのが常識でした。

 

今では、ピロリ菌の除菌に成功すると、胃酸を抑える薬を飲まなくても潰瘍の再発が抑えられることが明らかとなっています。

 

そして、ピロリ菌に感染している人の除菌治療が進み、また、衛生状態が良くなり若い世代のピロリ菌感染率が下がったことで、胃や十二指腸の潰瘍はもはや「レア」な病気になりつつあります。

 

ほんの数年間の出来事ですが、日本人の胃は変わり、起きる病気まで劇的に変わったのです。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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