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日本における「げっぷ障害」の有病率

日本における「げっぷ障害」の有病率

げっぷは胃や食道に溜まった空気が逆流して口から出る状態で、誰しもが経験する生理現象です。

 

ただし、日常生活に支障を来すほどの過剰で不快なげっぷとなると、話は別。

 

本人にとって、げっぷはただの生理現象では片づけられない深刻な症状となり、機能性消化管障害の国際的基準であるローマIV分類において、「げっぷ障害」は1つの疾患として掲げられています。

 

また、この「げっぷ障害」の患者さんの頻度は、国際的な調査では成人の約1%と報告されています。

 

この度、大阪公立大学の研究チームが日本の一般成人1万人を対象としたWeb調査を実施し、げっぷ障害の頻度と他の病気や生活習慣との関連について調査した結果が報告されました。

Fujiwara Y, et al. American Journal of Gastroenterology 2024.

 

この日本人を対象とした初めての調査の結果、ローマIV基準による「げっぷ障害」(週に3日以上の煩わしいげっぷが3か月以上続く)に該当する人は10,000人中151人(1.5%)であり、これまでの世界の報告と差がないことが分かりました。

 

日本の成人は約7000万人ですので、その1.5%とすると100万人以上の方がげっぷ障害に悩まされているという計算になります。

有病率から考えると、症状に困っていても医療機関には受診していない・・・という方もきっと多いことでしょう。

 

また、げっぷ障害がない人と比較すると、げっぷ障害の方は胃食道逆流症(オッズ比4.35倍)、機能性ディスペプシア(1.93倍)、甲状腺疾患(3.64倍)を抱えている方が多いことも明らかにされました。

 

さらに、食習慣に関しては、食べる速度が速すぎる(1.54倍)または極端に遅いこと(1.85倍)、咀嚼回数が極端に少ない(1.44倍)または極端に多い(2.43倍)こと、満腹まで食べること(1.54倍)が、げっぷ障害の発症と関連することも分かりました。

 

対して、炭酸飲料水の摂取頻度とげっぷ障害とは関連がないことも明らかになっています。

 

げっぷは、胃食道逆流症(胃酸が食道に逆流することにより胸やけなどを生じる患者さん)や機能性ディスペプシア(胃カメラで病変がないにもかかわらず、胃痛や食後のお腹の張り、すぐにお腹がいっぱいになるなどの症状を生じる患者さん)においても、確かによく見られる症状です。

 

胃食道逆流症ではげっぷをするから胃酸が逆流するのか、逆流するからげっぷが生じるのか・・・

機能性ディスペプシアではお腹が張るからげっぷが出るのか、空気を飲み込むからお腹が張るのか・・・

卵が先か鶏が先かのような問答ですが、げっぷ障害と胃食道逆流症および機能性ディスペプシアは重なり合っている疾患群だと考えられます。

 

食習慣では、これまでにも「早食い」や「食べ過ぎ」でげっぷが起こりやすいことは指摘されていましたが、噛む回数が多過ぎたり、食べるのが極端に遅すぎたりしても、同じようにげっぷ障害が生じやすいという結果が出たのは、興味深いところです。

 

胃の中で空気が生まれるわけではありませんので、げっぷで出ていく空気というのはほとんどが自分で胃に飲み込んだものです。

 

「早食い」で食べ物や飲み物と一緒に飲み込む空気の「1回の量」が多いという方も、「遅食い」で飲み込む空気の「回数」が多いという方も、結果として同じように胃に空気が溜まってしまうのではないでしょうか。

 

この結果から、食べ方に関する認知とそれに対する指導が、げっぷ障害の患者さんの治療となる可能性が示唆されます。

 

ただし、この研究においては、食後だけでなく普段から頻回にげっぷを生じる呑気症(空気嚥下症)の要因となる不安、緊張、うつ、噛みしめ癖(歯牙接触癖)などについては、残念ながら調査されていないという制限があります。

 

げっぷは、食べ方やもともと抱えている病気が原因となるだけでなく、不安、緊張、ストレスや噛みしめ癖によっても生じますので、これらを複合的に考えて生活指導や治療を行う必要があるものと考えています。

 

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

日本炎症性腸疾患学会IBD専門医・指導医

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