小腸カプセル内視鏡始めました
クローン病患者さんの治療は、年々進歩しています。
昨年、新たな生物学的製剤である抗IL-23抗体製剤スキリージが承認され、さらに今年は、低分子化合物(飲み薬)であるJAK阻害薬リンヴォックも使えるようになりました。
今や、クローン病患者さんの治療目標は大きく変わり、症状が落ち着いているのはもはや当たり前。
治療の選択肢が増えたことで、さらにその先の、「粘膜治癒」と呼ばれる内視鏡検査でみて治っている状態や、先日のブログで書いた「QOLの向上」というより高い目標を目指して治療を工夫しよう!という「Treat to Target」という概念が定着してきています。
ただし現実は、こういったさまざまな生物学的製剤を駆使しても、そう簡単には「粘膜治癒」まで達成できていない・・・という課題も見えてきました。
とくに、小腸の病変。
クローン病患者さんの小腸の炎症は大腸と比べると治りにくく、小腸で粘膜治癒を達成するためには大腸の炎症を抑えるよりもはるかに高い濃度のお薬が必要だということも分かってきています。
たしかに、お薬がよく効いて症状は安定し、大腸カメラで見える範囲はきれいに治っているのに、血液検査では炎症の数値がちょっと高い・・・きっと小腸に炎症がくすぶっているのだろうな・・・という患者さんがおられます。
実は、小腸の病変はやっかいで、症状が落ち着いているからと油断してそのままにしておくと、将来的には腸が狭くなる、孔が開くなどの合併症を起こして入院や手術にもつながってしまいます。
そこで大切になるのが、適切なタイミングで行う小腸の検査。
これまで、クリニックでは小腸を検査する手段が腹部エコーしかなく、細かい病変を調べるためにはこれまでは大学病院に紹介して小腸カプセル内視鏡検査をお願いしていました。
ところが、患者さんにとってはこれが結構な負担になります。
まず、一度大学の外来を予約して受診。
次に、カプセルが問題なく通過するかどうかを事前に確認するダミーカプセル(パテンシー)の検査のための受診。
そして、本番の小腸カプセル内視鏡検査。
これらすべて、平日の受診が基本。
さらに、検査の結果が判明するまでに約2か月の待ち時間。
カプセル内視鏡自体は、体に負担の少ない、とても簡便な検査なのですが、受診などの手間を考えると、症状が落ち着いている患者さんにはなかなかお勧めしにくいという現実がありました。
そこで、これらの負担を少しでも和らげ、クローン病患者さんにとって大切な小腸の検査に対するハードルを下げるために、クリニックに小腸カプセル内視鏡検査の機器を導入しました!
カプセル内視鏡~はじ~めました~♪(AMEMIYA?)
クリニックでカプセル内視鏡検査を行っている施設は、兵庫県下ではほんの数施設だと思います。(件数が限られるマニアックな検査かつやっても赤字・・・ですからね)
これからのクローン病治療は、いかに小腸の病変をマネジメントし、粘膜治癒を達成するかがネクストステップです。
そのための検査ツールとして、小腸カプセル内視鏡を活用したいと思います。
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医