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大腸憩室は腸の老化のサイン?

大腸憩室は腸の老化のサイン?

大腸カメラを受けた時に「憩室(けいしつ)がありますね。」と言われたことはありませんか?

憩室とは消化管の壁の一部が、外側にポコッと袋状に飛び出たものです。

内視鏡で見ると、「くぼみ」に見えます。

憩室はどの消化管にもできますが、とくによくできるのは大腸です。大腸では上行結腸やS状結腸によく見られます。中には何十個というすごい数の憩室を認める方もいらっしゃいます。

 

では、憩室はどうしてできるのでしょうか?

 

腸の壁には、食べたものを運ぶ運動(蠕動運動:ぜんどううんどう)をするための筋肉があります。そしてこの筋肉は、腸に流れる動脈が通っているところで部分的に欠けています。ここが腸の壁の弱い部分で、歳を取るにつれて腸の筋肉が緩んだり、便秘などで腸の内圧が上がったりした際に圧力に耐えきれなくなり、外側に押し出されて憩室ができると考えられています。

 

つまり、「憩室」そのものは病気ではなく、主に加齢現象によって「腸の壁がゆるんで飛び出した」だけのものです。

皮膚で言うと「しわ」や「たるみ」のようなものと言えば分かりやすいでしょうか?

 

実際に、大腸憩室は40歳未満の若い人には滅多にみることはありません。そして、歳と共に増えてきて、50歳では約3割、70歳を超えると半数以上の方に認められるようになります。

皮膚にしわができるように、ご高齢の方の大腸に憩室ができるのは、ある意味仕方のないことです。そして、憩室ができても普通は何の症状も起こりませんので、治療する必要は無く放っておいても大丈夫です。

 

ですが、もちろんできないに越したことはありません。

 

憩室がたくさんできてくると、便秘や下痢などの便通の異常やお腹の張りなどを感じることがあります。

また、時には炎症を起こしてお腹が痛んだり熱が出たりする憩室炎や、突然大量に出血する憩室出血といった合併症を引き起こす可能性があります。

 

憩室炎はひどくなると腸に穴が開いて腹膜炎になることがありますし、軽い場合でも繰り返していると周りの腸や腹膜にまで炎症が及んで腸が癒着してしまいます。

 

この「癒着」はわれわれ内視鏡医にとって、とても厄介なものです。

とくにS状結腸の憩室によってひどい癒着が起こると、カメラを押しても引いても腸を真っすぐに畳むことができなくなります。

無理をすると腸が破れる危険性がありますので、カメラを挿入している時に「ガチガチ」に強い抵抗を感じた場合には、奥の盲腸まで入れるのを断念せざるを得ません。

憩室自体には問題なくても、カメラができなくなることでその奥に潜む大腸ポリープや大腸がんを発見できなくなってしまうのです。

 

また、炎症や癒着がなかったとしても、内視鏡医にとって憩室はあるだけで厄介なものです。

憩室のくぼみには、コロコロした丸い便が詰まっていることがよくあります。これが前処置の下剤を頑張って飲んでもなかなか出ていかず、検査の邪魔になってしまいます。

 

また、憩室出血も厄介です。

もともと腸に流れる動脈が通っているところに憩室ができやすいので、この血管にちょっとした傷がつくと出血を起こします。

何の痛みも感じず突然ドバっと赤黒い血便が出るのが特徴で、リットル単位で大量に出血することも珍しくありません。

ほとんどは自然に止まるのですが、血圧が下がったり、出血が止まらなかったりした場合には、入院や輸血、大腸カメラで出血を止める処置などが必要になります。

また、何度も憩室出血を繰り返す場合には、外科手術が必要になることもあります。

冒頭のように大腸カメラを受けて「憩室がありますよ」と言われていた方が、腹痛を伴わない急な血便を生じた場合には憩室出血が第一に疑われますので、すぐに医療機関に受診してください。

 

このように憩室はたかが「腸のたるみ」ですが、「憩いの部屋」と書く名前ほどに良いものではなく、決して侮れません。

お肌も腸も、いつまでもたるみの無い若々しい状態を保つに越したことは無いのです。

 

ところが最近、日本人に大腸憩室が増えてきていると言われています。

 

もともと日本人は、右側の大腸(盲腸〜上行結腸)に憩室ができやすい体質があるものの、欧米人に多い左側の大腸(下行結腸〜S状結腸)の憩室はそれほど多くありませんでした。

 

ところが、高齢化に加えて近年の食生活の欧米化に伴い、日本人に左側の大腸に発生する欧米型の憩室が増えてきています。

肉や脂質を食べる機会が増え、食物繊維の摂取が少ない欧米型の食生活は、慢性的な便秘や腸の内圧を上げることにつながり、憩室が増える大きな要因となっているようです。

 

実際に、大腸カメラで検査していると「あれ?まだこんなに若い人なのに憩室がいっぱいできてる・・・」と思う機会が増えました。

 

かくいう私も、昨年50歳で受けた大腸カメラで上行結腸に憩室が見つかってしまいました・・・

これって、間違いなく腸の老化のサインですからねぇ・・・ショック( ;∀;)

食事はバランスよく食べてるつもりなんだけどなぁ・・・

運動不足なのは間違いないけど・・・

 

皮膚のしわが元に戻らないように、一度できてしまった憩室を元通りに戻すことはできません。

これ以上憩室を増やさないようにするためには、生活習慣を見直して予防していくことが大切になります。

野菜や穀物、豆類などの食物繊維を意識して摂取し、動物性のタンパク質や脂質を控えること、そして十分に水分を摂り、体を動かして便秘にならないように日頃から心がけましょう。

 

運動・・・しなきゃなぁ・・・

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ