大腸ポリープを見つける技術が運命を変える?
大腸カメラで、「大腸がんの芽」である大腸腺腫(せんしゅ)という種類のポリープを見つけて取ることが、将来の大腸がんの発生・死亡の減少につながるとお話ししました。
逆に言うと、せっかく大腸カメラを受けても腺腫が見落とされてしまっては、大腸がんになるリスクは減りません。
われわれが大腸カメラをするする際に、患者さんが辛くないように検査をする技術はもちろん大切なのですが、病気の見落としがないように発見・診断する技術はもっと大事なのです。
内視鏡医が病気を見つける技術の指標として、1回の大腸カメラで1個以上の大腸腺腫が発見される割合〔腺腫発見率(adenoma detection rate:ADR)〕というのものが提唱されています。このADRは、内視鏡医によって7%〜53%とかなりばらつきがある、つまり見落とさないように発見する技術には専門医の間でも大きな差があるということです。
そしてその結果として、大腸腺腫発見率(ADR)の高い医師は大腸がんの発生や死亡を確実に減らしていることが分かりました。ADRが1%上がるごとに、大腸がんの発生リスクは3%下がると報告されています。
ADRを上げるためには、内視鏡操作の基本的な技術に加えて、時間をかけて丁寧に見ることが大切だと言われています。
わたしはポリープを見つける「目」に自信はありますが、クリニックではさらに、解像度の高い内視鏡システムを導入したり、カメラの先端にフードを付けて死角になりやすい大腸のヒダの裏側までしっかり観察したり、内視鏡室の照明をブルーライトにして画面に集中できる環境を整えたり、見落としを減らすためのさまざまな工夫を凝らそうと考えています。
しかし、医師も人の子です。
人が行う検査である以上、一定の確率で起こる見落としはどうしても避けられません。
内視鏡をする前の下剤(前処置)で腸がきれいにならずに便が残っていたり、腸の収縮が強かったりすると、どんなにがんばっても十分に観察できないこともあります。
技術によりますが、見落とす割合は最大で40%にもおよぶとされています。つまりポリープが10個できていたとして、1回の検査ではそのうち6個しか発見されないということもあり得るのです。
大腸カメラはしっかりした技術のある医師にやってもらうのはもちろん、それでも一定の確率で見落としがあるということを忘れずに、期間をあけて繰り返し受けることをお勧めします。
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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ