大腸カメラはどのくらいの間隔で受ければいい?
症状が無い方に大腸カメラを受けていただく目的は、大腸がんをできるだけ早期に発見すること、そして良性ポリープ(腺腫)のうちに切除して大腸がんを予防することにあります。
大腸がんができても、かなり進行するまで何の症状も感じないことがほとんどです。
大腸がんができる確率は、40歳を過ぎた辺りから年齢とともに上昇していきます。
大腸がん検診の適齢期とも言える40歳になったら、症状が無くても毎年必ず大腸がん検診(便潜血検査)を受ける、もしくは思い切って一度大腸カメラを受けていただきたいところです。
クリニックで進行大腸がんが見つかった人の多くは、これまで一度も大腸カメラを受けたのことないご高齢の方や、検査を受けるのが10年以上ぶり・・・といった方々です。
「血便が出た」「便がスッキリでなくなった」といった症状が出てから、初めて重い腰を上げて検査を受けに来られるのですが、それでは早期発見や予防はできません。
こういった症状が出る前に「定期的」に大腸カメラを受けることで、大腸がんで命を落とす可能性は極めて低くなります。
さらに、見つかった腫瘍を良性のうちに切除しておけば、大腸がんになることさえほとんどありません。
大腸がんは数少ない「予防できるがん」です。
では、「定期的」って、どれぐらいの間隔で大腸カメラを受けるのが良いのでしょうか?
40歳以上で初めて受けた大腸カメラの検査結果によって、次に受けていただきたい検査の間隔は変わります。
1.大腸カメラで「異常なし」といわれた場合
次の内視鏡検査の目途は、ご心配なら3年後、通常は5年後で良いと思います。
がんは、すぐにはできません。
何もないきれいな大腸に、良性のポリープである腺腫ができ、それが大きくなってがんになり、さらにがんが進行して救命することが難しくなるまでには、通常は少なくとも10年程度の期間がかかると考えられます。
欧米の報告では、初回の大腸カメラで腺腫を認めなかった場合、大腸がんで亡くなる危険性を減らす効果は、3年後までは90%、10年後までは80%でした。
見つけにくいポリープやがんもありますので、1回の内視鏡検査では見逃してしまっている可能性はゼロではありませんが、もし見逃しがあったとしても5年のうちに命を落とすような状態まで進むことはきわめて稀です。
便潜血検査が陽性で大腸カメラを受けた結果、「ポリープ(腺腫)なし」と診断された場合には、また毎年の便潜血検査に戻るか、5年後に大腸カメラを受けるかのどちらかを選んでいただいて良いと思います。
痔などをお持ちで、繰り返し便潜血検査が陽性になってしまうような方は、そのたびに大腸カメラを受ける必要は基本的にございませんので、5年に1度の検査をお勧めします。
2.大腸がんや大腸ポリープ(腺腫)の切除を行った場合
初回の大腸カメラの検査の結果が以下のような場合、次回の検査を1年後に受けることをお勧めします。
① 進行大腸がんが見つかり、外科治療を受けた方
② 早期大腸がんが見つかり、内視鏡治療を受けた方
③ 6個以上のポリープ(腺腫)が見つかり、内視鏡治療を受けた方
④ 10mm以上の大きさのポリープ(腺腫)が見つかり、内視鏡治療を受けた方
5個以下の小さな腺腫を切除した方については、見逃しの可能性も踏まえて念のために次回は2年後に大腸カメラをお勧めしています。
また、2回目以降の大腸カメラで、腫瘍性のポリープが1つも見つからなかった場合(クリーンコロン)には、その次の検査は3〜5年後で良いと思います。
ただし、検査前の下剤がうまく行かず、便が残っていて観察が不十分になってしまった場合などには、念のため少し早めに検査をお勧めしています。
「以前に大腸ポリープを取ったから、毎年検査を受けるようにしている」という方もおられますが、それほど頻回に検査を受ける必要はございません。
3.炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の場合
慢性の腸炎は、大腸がんが発生するリスクになります。
炎症性腸疾患の方は症状が落ち着いていても、2年に1度はがん検診のための大腸カメラを受けましょう。
10歳代、20歳代の方にも発がんがすることがありますので、年齢を問わず定期的な検査が必要です。
とくに、
・内視鏡検査で見るといつも炎症が残っている方(慢性持続)
・過去に炎症が強い時期があり、潰瘍の傷跡や炎症性ポリープが多く見られる、腸が短くなったり狭くなったりしているなどの腸の変形が目立つ方
については、がんの危険性が高いので1年毎に検査をお勧めしています。
ご参考にしていただき、適切なタイミングで大腸カメラを受けて頂ければと思います。
西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医