全大腸色素内視鏡始めました
始めましたシリーズ?の第3弾。
大腸内視鏡検査を行う大きな目的は、将来の大腸がんの芽である「腺腫」や「SSL」というタイプの腫瘍性(できもの)ポリープを見つけて取ることです。
逆に言うと、せっかく大腸カメラを受けても腫瘍性ポリープが見逃されてしまっては、大腸がんになるリスクは減りません。
われわれが大腸カメラを行う上で、患者さんが辛くないように検査する技術以上に大切なのが、腫瘍の見落としがないように確実に発見する技術です。
しかし、医者も人の子。
大腸腺腫を発見する確率(adenoma detection rate:ADR)は、内視鏡医によってかなりのばらつきがあると言われています。
そして、どんな内視鏡の達人でも「見逃しゼロ」はありえません。
わたしもこれまで、できるだけ見逃しがないように慎重に観察してきましたが、精度をさらに上げるために、今月から「全大腸色素内視鏡」という新たな観察方法を導入しました。
用いる色素は、「インジゴカルミン」という食用としても使われている安全性の高い青色の色素です。
色素を溶かした青い液体を大腸全体にまんべんなく撒くことで、粘膜の凹凸が強調されます。
すると、通常の内視鏡観察では見逃しやすい微小なポリープや平らな形のポリープが認識しやすくなるのです。
実際に、「全大腸色素内視鏡」によって40%以上のポリープの見逃しが防げるという論文報告もあります。(Gut. 2018, 67(9):1742-1743)
またこの「全大腸色素内視鏡」は、通常のポリープの発見だけでなく、非常に見つけにくいとされている潰瘍性大腸炎の患者さんに発生する腫瘍を発見するためにも有用な方法として、欧米のガイドラインで推奨されています。
実は、このインジゴカルミンという色素を散布する方法は決して新しい技術ではなく、大昔から行われています。
ところが、およそ1.5mもある長い大腸全体に色素を注射器で何度も撒きながらくまなく観察するためには、かなりの時間と労力がかかります。
そのため、良い方法だと分かってはいても一般には普及しておらず、「全大腸色素内視鏡」を行っている施設はごく一部に限られていました。
そこに、先日参加した神戸無床内視鏡診療研究会(KCOE)という会で、蓮尾胃腸内視鏡クリニックの蓮尾直輝先生が、スコープ先端から水を噴射するウォータージェット機能で「水」の代わりに「インジゴカルミン液」を噴射する方法を紹介されていました。
これなら、時間も労力もそれほどかからず、検査の精度を上げられるに違いない!・・・と、さっそく導入した次第です。
大腸を盲腸まで挿入するときには通常の「水」を撒き(浸水法)、戻るときには「インジゴカルミン液」を撒いて観察します。
実際にやってみると、通常の観察では分かりにくかったポリープが確かに容易に認識できます。
大腸がんになる方を一人でも減らすために。
できることは、なんでも貪欲にチャレンジしたいと思います。
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医