傾聴すること
先週のブログは、IBD患者さんのQOL(クオリティ オブ ライフ)について書きました。
IBDに限ったことではありませんが、わたしたちが病気の方のQOLを上げるお手伝いをするためには、最適な治療を提案することはもちろん、患者さんの普段の「Life」について把握しておくことも必要です。
・家族構成は?
・生活のリズムは?
・どんな食事をしている?
・学校生活は?
・どんな仕事?
・趣味やストレスの発散方法は?
・今の悩みは?
・何を大切にしている?
・何を幸せに感じる?
・・・ですが、これがなかなか難しい。
外来での診療時間はどうしても限られています。
とくに大学病院に在籍していた時の外来では、
・患者さんは増える一方
・症状の確認と治療の説明で精一杯
・「お変わりないですが?」「お薬出しておきますね。」の3分診療・・・
になってしまい、病気のこと以外の、いわゆる「世間話」に耳を傾ける余裕がなかなか持てませんでした。
クリニックを開業してからは、多少の余裕が出てきたのと、なによりもスタッフの「傾聴する力」に助けられて、少しずつですが患者さんの背景にある「Life」について知ることができるようになりました。
若いころからの長いお付き合になるIBD患者さんでさえ、
「えっ、結婚してたん?」
「そんな仕事してたんや!」
「めっちゃ阪神ファンやん!」(←そこ?)
と今更ながらに驚いたりすることもしばしば。
いかに患者さんのことを分かっていなかったかを、痛感しています。
クリニックでお会いする限られた時間の中ですので、すべての患者さんの、すべての「Life」についてお聴きするのは、実際には困難です。
ですが、患者さんが話したくなった時に、わたしたちがしっかり耳を傾けること。
いや、それ以前に患者さんに気兼ねなく話したいと思ってもらえるような信頼を得ること。
そして、医療者と患者さんという立場だけではなく、人と人として語り合えるような関係になっていければ良いな・・・と思います。
「病」ではなく「人」を診る。
これは、これから医療の分野にもどんどん入ってくるAIには決してできないことです。
こんな時代だからこそ、人と人とのつながりを、より大切にしていきたいと思います。
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医