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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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胃腸内科 / 内視鏡内科

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便秘薬を見直しましょう

便秘薬を見直しましょう

日本の病院でよく処方される便秘の治療薬と言えば、酸化マグネシウムと刺激性下剤(プルゼニド、センノシド、センナ、大黄など)です。

このうち、使い続けると良くないのが刺激性下剤です。「刺激性」の文字通り、腸の壁の筋肉を強力に刺激して動かす作用があります。
薬で腸を無理やり動かすわけですから確かに便秘に良く効くのですが、次第に薬だよりになって飲まないと腸が動かなくなり(習慣性)、気持ち的にも止められなくなり(精神的依存性)、最後は飲んでも動かなくなっていきます(薬剤耐性)。

今まで見た患者さんの中には、なんと1日に100錠(茶碗1杯!)もの市販の刺激性下剤を毎日飲まないと出ないと言って来られた方もいらっしゃいました。
下剤は町の薬局やネットで誰でも簡単に買えますので、あっと言う間に薬物依存になってしまいます。
恐ろしいですね・・・


ちなみに、刺激性下剤を連用している方の腸を内視鏡で見ると真っ黒になっています(大腸偽メラノーシス)。これは、薬が腸の粘膜を傷つけ、色素が沈着することで起こります。このような方は、腸が黒いだけでなく、伸びきったゴムのようにゆるゆるになってしまっています。
ですので、刺激性下剤はできるだけ毎日の連用は避け、どうしても必要なときに頓用で使うべきです。

一方の酸化マグネシウムは「浸透圧性」下剤と言い、便に水分を含ませて軟らかくする非刺激性のタイプです。
わたしたち医療従事者は略して「カマ」とか「カマグ」と呼んでいます。
爽快にすっきり出る感じは乏しいかもしれませんが、刺激性下剤とは異なり、連用しても耐性がついて薬の効果が落ちることはないと言われています。
また、酸化マグネシウムには尿管結石の成分であるシュウ酸カルシウムを体内で作りにくくする作用もあり、結石の予防にもつながります。
ただ、腎臓が悪い方では吸収されたマグネシウムの血中濃度が上がり、吐き気や低血圧、体のだるさなどを起こすことが稀にありますので、注意が必要です。

日本では値段が安い上に効果が良い酸化マグネシウムがずっと昔から使われてきましたが、実はこの薬は海外ではほとんど使われていません。
わたしもあまり知りませんでしたが、日本の便秘治療は知らぬ間に「ガラパゴス化」していたようです。

実はこの数年の間に、海外でも良く使われる「上皮機能変容薬」などの新たな便秘薬が日本でも次々と承認されました。
アミティーザ®、リンゼス®、グーフィス®、モビコール®といったお薬ですが、いずれも便に水分を含ませて軟らかくするタイプのお薬です。便が水分で膨張することで大腸が自然に刺激され、腸の動きも活発になります。しかも、長く使い続けても薬の効き目が落ちず、体にほとんど吸収されないか、吸収されても速やかに分解されるので、より安全になっています。
2017年には「慢性便秘症診療ガイドライン」が発表され、日本の便秘治療は新たなスタートを切りました。

現在飲んでいる酸化マグネシウムで十分と言う方には、値段の高い新薬を無理に試す必要はありませんが、刺激性下剤に頼ることが多い便秘症の方は、今が便秘薬を見直す良い機会かもしれません。

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ