ヨーグルトで腸内環境が整うって本当?
腸内細菌の大まかなバランスは、実は生後2~3年でほぼ決まっています。
お母さんのお腹の中の赤ちゃんは無菌状態です。生まれてから初めて口から菌が入り、腸内フローラを作っていきます。
そして、生後3カ月から1歳2カ月ごろまでに腸内細菌は大きく発達し、3歳までに大まかな腸内環境は決まります。ピロリ菌の感染が起こるのもこの時期でしたよね。
その後、成年期には食事などライフスタイルの影響で多少の変化がみられますが大きくは変わらず、老年期に入ると、善玉菌であるビフィズス菌が減り、ウェルシュ菌などの悪玉菌が増えてきます。
図. 年齢と共に移り変わる腸内細菌叢
では、食べ物で腸内細菌のバランスを整えることはできるのでしょうか?
腸に良さそうな食べ物として、みなさんがパッと頭に思い浮かぶのはヨーグルトや乳酸菌飲料ではないでしょうか。
乳製品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、腸内の善玉菌を優勢に保つのに有効で、腸内環境を整えるのに役立つといわれています。
スーパーやコンビニには、整腸作用を謳った乳製品がずらりと並んでおり、中には100億個だ、1000億個だと、菌の数をアピールしているものもありますね。
1000億というとものすごい数のように思われるかもしれませんが、100兆から1000兆個と言われるもともと棲んでいる腸内細菌叢にとっては、1000から1万分の1にしか過ぎません。
しかも、腸にたどり着く前に、かなりの菌が胃酸によって死んでしまいますので、生きたまま腸にはそれほど多くは届かないと考えられています。
さらに、実はヨーグルトの菌はもともとおなかの中にいる「常在菌」とは異なる「通過菌」ですので、腸の中には住み着かずにしばらくすると出て行ってしまいます。
・・・と言うことは、定期的にかなりの量の乳製品を食べ続けなければ、腸内環境を整える効果は残念ながらあまり期待できないということになります。
では、「かなりの量」って、いったいどれぐらいなんでしょうか?
毎日1兆個ぐらい善玉菌を摂らないと腸内フローラは変わりませんので、それをヨーグルトに換算するとだいたい10リットル、バケツ1杯分です。
・・・毎日食べ続けられるのは、ギャル曽根さんぐらいでしょうか?
ということで、乳製品は食べないよりは食べたほうが良いものの、常識的に食べている量では、腸内環境を整える効果は期待するほどはない、というのが結論です。
これは、IBDの患者さんや下痢・便秘症の患者さんが医師から処方される整腸剤(ビオフェルミン、ミヤBM、ラックビー、ビオスリーなど)にも同じことが言えます。これらの薬は、一定の量を飲み続けなければ、あまり効果はありません。
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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ