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ベジタリアン食で胃がんのリスクが6割も減る!?

ベジタリアン食で胃がんのリスクが6割も減る!?

最近、ベジタリアンやヴィーガンといった菜食生活を送る人が増えています。

菜食を始める理由は、「健康になりたい!」「地球環境のため!」「動物愛護のため!」など人それぞれです。

 

そして、その実践方法も、

・動物性食品を一切食べない厳格なヴィーガン

・乳製品も食べるラクト・ベジタリアン

・乳製品・卵も食べるラクトオボ・ベジタリアン

・乳製品・卵・魚も食べるペスコ・ベジタリアン

・乳製品・卵・魚・鶏も食べるポーヨー・ベジタリアン

・週に何日かだけ菜食を実践する「ゆるヴィーガン」

に至るまで、実にさまざま。

 

2018年の観光庁の報告によると、各国のベジタリアンの人口比率は、インド28%、台湾14%、ドイツ10%、英国5%、米国3%などで、日本では4%とのこと。

 

「オリチキ最高!」・・・とか言うてる人にとっては遠~い世界のお話ですが、健康や環境への意識が高まりとともに若い人を中心に動物性食品を控える方が増えており、最近の調査では日本人のベジタリアン人口は5.0%。そのうちなんとヴィーガンが1.9%にまで増えているとの報告もあるようです。

わたしの知り合いにはベジタリアンの方はいませんが、日本人にもそんなにいるんですねぇ・・・。

 

では、ベジタリアン食は本当に健康につながるのでしょうか?

 

今年報告された「ベジタリアン食と胃腸のがんのリスク」に関する興味深い研究がありますので、ご紹介します。

Vegetarian diets and the risk of gastrointestinal cancers: a meta-analysis of observational studies.

Bai T, et al. Eur J Gastroenterol Hepatol. 2023

 

これは、これまでに発表されてきたベジタリアン食と消化器がんの罹患リスクに関する8件の観察研究をまとめて解析(メタ解析)したもので、ベジタリアン食は「肉または肉製品を含まない食事」と定義されています。

 

結果は相対リスク(relative risk:RR)で示され、これは「ベジタリアン食の人が、そうでない人と比べて消化器のがんに何倍罹りにくくなるか」を表しています。

 

主な結果は、以下の通り。

 

① ベジタリアン食の人が消化器のがんに罹るリスクは、そうでない人と比較して低かった(相対リスク[RR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.90)。

 

② ベジタリアン食は胃がんに罹るリスクを減少した(RR:0.41、95%CI:0.28~0.61)。相対リスクが0.4倍ということは、ベジタリアン食の方はそうでない方より胃がんのリスクが約6割減るということです。

 

③ ベジタリアン食は大腸がんに罹るリスクを減少した(RR:0.85、95%CI:0.76~0.95)。

 

④ 一方で、胃を除く上部消化器がん(食道がんなど)のリスクとは相関しなかった(RR:0.93、95%CI:0.61~1.42)。

 

⑤ ベジタリアン食は、男性では消化器がんのリスク減少と関連したが(RR:0.57、95%CI:0.36~0.91)、女性では関連しなかった(RR:0.89、95%CI:0.71~1.11)。

 

⑥ ベジタリアン食は、北米の集団(RR:76、95%CI:0.61~0.95)およびアジアの集団(RR:0.43、95%CI:0.26~0.72)では消化器がんのリスク減少と関連を示したが、ヨーロッパの集団(RR:0.83、95%CI:0.68~1.01)では関連しなかった。

 

これまでにも、大腸がんの予防には果物、野菜、穀物、豆類といった植物性食品がよいという報告はありましたが、胃がんのリスクをこれほど下げることには驚きました。

 

胃がんになる危険性を高める主要因はピロリ菌感染ですが、それに加えて「肉食をやめて菜食にすることで胃がんの危険性が半分以下に減る」というのは、かなりインパクトがあります。

 

ベジタリアン食で胃腸のがんが減る理由としては、

・植物性食品に含まれる食物繊維、カロテノイド、ビタミンA・C・Eなどの抗がん作用を有する物質によるがん予防効果

・発がんのリスクを上げる動物性食品(赤身肉や加工肉)を摂らないことによるがん予防効果

・腸内細菌叢のバランスがよくなることによるがん予防効果

などが考えられます。

 

では、男性がベジタリアン食で胃腸がんのリスクが減るのに、女性では減らないのはなぜなのか?

その理由は、女性ホルモンに胃腸のがんの発生を抑える作用があり、男性よりも女性の方が胃腸のがんになりにくいという性差がもともとあるため、菜食によるがん予防効果が表れにくいことなどが考えられます。

 

研究者らは、「ベジタリアン食は消化器がんの罹患リスクを低下させる可能性が高いが、小規模の調査のため、効果を評価するにはさらなる研究が必要である。」と述べています。

 

極端なベジタリアン食には問題もありますので、一概によいとは言いきれませんが、

・家族に胃腸のがんに罹った方がいるので心配・・・

・ピロリ菌を除菌したけど胃がんのリスクが心配・・・

・大腸ポリープがよくできるので大腸がんのリスクが心配・・・

といった方は、野菜や果物をしっかり摂ることを意識するのもよいかもしれません。

 

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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