WEB予約

ひだ胃腸内視鏡クリニック

ご予約・お問い合わせ

0798-26-5070

胃腸内科 / 内視鏡内科

阪神西宮駅徒歩30秒

シェアすること

シェアすること

大腸内視鏡検査の技術を習得するのは、そう簡単な事ではありません。

しかも、わたしが医師になったころは、大腸カメラの挿入方法がまだ確立されていない黎明期でした。二人法という医師二人がカメラの出し入れと手元の操作を別々に分担する挿入法から、ニューヨーク在住の新谷先生が考案した一人法へと移り替わりつつある・・・そんな時代だったのです。

 

これからの主流になるであろう一人法を習得したくても、二人法をされていた大学の先輩方からは教わることはできず、やりたいならとにかく自分でやってみるしかありませんでした。

ところが、一人法について書かれている書籍は当時ほんの1-2冊しかなく、それも主に理論が書いてあるだけで、具体的どうすればうまくいくのかについては読んでもほとんど分かりません。あとは、参考になるのは新谷先生のVHSビデオぐらい・・・。

「押さずに引いて入れていく???」

「右回旋を掛けて腸を短縮する???」

何となくイメージは分かるのですが、頭の中は???だらけ。

 

そんな状態でしたので、当然のことながらスムーズにどんどん上達するというものではありませんでした。要らない力が入りすぎて、1例検査をするだけで手がパンパン。

でも、試行錯誤の末にうまくいったときの達成感といったら・・・苦労よりも楽しさとやりがいがはるかに勝り、内視鏡検査の魅力にのめり込んでいった時期です。

 

今は、大腸内視鏡の挿入に関する質の高い本が山のようにあり、You tubeなどでうまい先生の動画を見ることも簡単にできる時代です。

ですが、ただ本を読んだり動画を見たりして情報をインプットするだけではそう簡単にうまくならないのは今も同じ。

先日、大腸カメラの上達の兆しが無くて困っているというこの春から4年目の先生から連絡があり、クリニックに見学に来ていただきました。

 

折角来てもらった日に限って難しい大腸の症例が続き、こちらも教える余裕が無くなり「まだまだダメだなぁ・・・」と反省するばかりでしたが、検査が終わってから大学から借りてきた「コロンモデル」という大腸の模型を使って色々とテクニックをお伝えしました。

わたしも、若い時にはひたすらコロンモデルをやりこんで、色々なアイデアを思いつき、テクニックに磨きを掛けてきましたが、最小限の力でスコープに余すことなく力を伝えるコツなどは、実際に体験してもらわないと文章ではなかなか伝えられないんですよね。

 

内視鏡検査だけではなくIBDの診療に関することもそうですが、これまで必死に身につけてきた専門的な知識・理論・技術を、自分や身近な患者さんのために使うだけで終わってしまっては、もったいないと思います。

それを必要としている人とシェアすること、人に伝えて育てることは今の大きな目標であり、やり甲斐の1つです。

人に余すことなく伝えるためには、明確な方法論を持っているだけでなく、それを明瞭に言語化する必要がありますので、自分の頭の整理にもなりますし、更なるアイデアが浮かぶきっかけにもなります。

 

全国に800名を超える医師が参加している「二木会」という大腸内視鏡挿入法の勉強会があります。神奈川県の松島クリニックの鈴木康元先生が設立された会で、わたしは兵庫支部の幹事をしています。

この会の良いところは、患者さんに質の高い大腸内視鏡検査を提供して大腸がん死を根絶するという目標のために、全国の先生が惜しげもなく大腸カメラの挿入に関するアイデア・テクニック・ノウハウを提供し合っているという点です。しかも、私利私欲は全くなく、ボランティアで。

若手の先生が勉強になるのはもちろんですが、わたし自身も参加することで大いに刺激になっています。

 

ネットワークの発達で組織や地域などさまざまな垣根を簡単に飛び越えることができるようになった今、「技術は見て盗め」みたいな非効率的なやり方ではなく、良い考えはみんなでシェアして効率的に成長していくことが大切なのではないかと思います。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ