コーヒーで潰瘍性大腸炎の発症予防?
みなさんが普段から何気なく飲んでいるコーヒーが、もしかすると潰瘍性大腸炎の発症を予防しているのかも知れない・・・そんな研究結果が日本から報告されました。
Tanaka K, et al. Coffee and caffeine intake reduces risk of ulcerative colitis: a case–control study in Japan. Journal of Gastroenterology and Hepatology 2023
この研究は、症例対照研究という方法で行われており、日本の潰瘍性大腸炎の患者さん384人と、対照となる655人の方が参加されています。
コーヒー、カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、炭酸飲料、チョコレート菓子の普段の摂取量をアンケート調査で調べ、これらの摂取が潰瘍性大腸炎の発症と関連しているかどうかが検討されました。
(年齢、性別、喫煙、飲酒量、虫垂炎の既往、潰瘍性大腸炎の家族歴、学歴、肥満度指数、ビタミンC、レチノール、総エネルギー摂取量で調整)
その結果は・・・
・コーヒーおよび炭酸飲料の摂取量が多いほど、潰瘍性大腸炎を発症するリスクが有意に減少した。
・チョコレート菓子の摂取量が多いほど、潰瘍性大腸炎を発症するリスクが有意に高かった。
・カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶の摂取量と潰瘍性大腸炎を発症するリスクに関連は認められなかった。
・カフェインの総摂取量は潰瘍性大腸炎リスクと逆相関し、オッズ比は0.44(95%信頼区間:0.29~0.67)であった。
「コーヒー」は、過去の海外論文のメタ解析においても潰瘍性大腸炎の発症を抑える傾向にあり、日本人にも当てはまりそうだということが分かってきました。
しかし、同じくカフェインが含まれている「チョコレート菓子」は、潰瘍性大腸炎の発症リスクを逆に上げてしまうという結果に。
これは、炎症を抑えるカフェインよりも、チョコレート菓子に含まれる砂糖などの他の成分が、悪影響を及ぼしていることが考えられます。
しかし、そうと考えると、今回の「炭酸飲料」が潰瘍性大腸炎の発症を抑えるという結果が解せない。
過去の論文では、炭酸飲料を含むソフトドリンクが潰瘍性大腸炎を発症する危険因子としてあげられており、今回の結果は言わば真逆です。
炭酸飲料には、たっぷりの砂糖をはじめとする添加物が含まれています。
うーむ・・・どのように解釈するべきなのでしょうか?
ちなみに、今回の日本の検討では抑制効果が認められなかった「紅茶」は、海外のメタ解析では、有意に潰瘍性大腸炎の発症を減らすとの結果が出ています。
カフェインを含んだ飲み物は、基本的には潰瘍性大腸炎の発症を抑える方向に働くようです。
もう一つちなみに、うちのスタッフに「コーヒー」と「チョコレート菓子」どちらも目がない方がいます。
この結果からすると、潰瘍性大腸炎の発症リスクは「チャラ」なのかな?
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医