オミクロン対応ワクチンは接種するべき?
- 2022年9月25日
- 新型コロナウイルス
オミクロン対応の新しいワクチン(ファイザー社およびモデルナ社製)の接種が、ここ日本で始まりました。
このワクチンには、「武漢株」と「オミクロンBA.1株」の2種類のウイルスの情報が含まれており、2価ワクチンと呼ばれています。
「オミクロン対応」と言うと、さも現在流行しているオミクロン株に対応しているワクチンのようにも聞こえますが、今日本を含む世界中でほとんどを占めているのはオミクロン「BA.5株」。
ワクチンを作る元となった「BA.1株」は、既にすべて駆逐されてこの世から消え失せています。
では、今回の「BA.1」対応新ワクチンがどれぐらい「BA.5」に対して有効なのかと言うと・・・
ファイザー社がFDA(アメリカ食品医薬品局)に提出したマウスのデータによると、新たなワクチンは「BA.1」に対しては中和抗体を強く誘導するものの(←これは当たり前)、「BA.5」に対しては6分の1程度に効果が落ちるようです。
また、モデルナの新ワクチンのヒトに対する臨床試験データ(査読前論文)を見ても、接種後の「BA.5」に対する中和抗体は、「BA.1」に対する中和抗体の3分の1程度と、やはり低いものでした。
まぁ、ウイルスが変化しているわけですから、当たり前っちゃ当たり前の結果です。
これだけですべては語れるわけではありませんが、日本で新たに承認された「オミクロン対応ワクチン」には、従来のワクチンと同様に「重症予防の効果」は期待できても、「感染や発症そのものを予防する効果」は、それほど期待できないのではないかと思われます。
そういう背景もあってか、ワクチンを開発した本家のアメリカでは、なんと今回日本で接種が始まった「BA.1」対応のワクチンは使われないようです。
いやはや、これには驚きました。
この事実は、あまりマスコミでも大々的には報道されていないような・・・。
FDAの発表によると、アメリカで今後ブースターとして用いるオミクロン対応ワクチンは、BA.1対応ワクチンではなく「BA.4/5株」の情報を組み込んだ新たなワクチンとのこと。
BA.1対応ワクチンの臨床試験結果が出るころにBA.4/5株が急拡大して主流になったために、急遽BA.4/5株の情報を組み込んだ新たなワクチンを開発するように製薬会社に勧告がなされました。
ヒトに対する臨床試験はBA.1対応ワクチンのものだけで、アメリカでは追加の臨床試験は行わずに次のBA.4/5対応ワクチンを承認するようです。
見切り発車のようで怖い気もしますが、それぐらいのスピードでやらないとウイルスの変化について行けていないのも事実。
インフルエンザワクチンも毎年の流行する株を予測して組み替えられても、その度に臨床試験をしているわけではありませんからねぇ・・・
じゃあ、なぜ日本では「BA.1」対応ワクチンなのか?
「これなら直ぐに入手可能ですよ!」と、アメリカでは一度も使うことのない(ある意味型遅れの)ワクチンを売りつけられたのか?
もしかしたら、世界中で日本だけで接種されるワクチンになるんじゃ・・・(欧州でもBA.1対応ワクチンが承認されていますが)
同じ製薬会社のワクチンなのに、国によって異なるものが使われるという事態は、普通ではちょっと考えられません。
次の流行の波を起こすのは、BA.5ではなくさらに変異したウイルスのはずですので、どの時点でのワクチンでも結局のところは同じなのかも知れませんが・・・何ともスッキリしませんね。
わたしの見解は、今回日本で承認された「オミクロン(BA.1)対応ワクチン」は、3回目または4回目のワクチン接種がまだの「重症化リスクが高い人」であれば、接種しておいて良い・・・でもおそらく感染そのものの予防にはあまりならないだろう、といったところです。
逆に、重症化リスクが高い病気をお持ちでなければ、今すぐに積極的に接種する意義は少ないのではないかと感じています。
あくまでも感染症の専門家ではない消化器内科医の個人的な見解ですし、決してワクチンの効果を否定している訳ではありませんので、誤解の無いようにお願い致します。
ちなみに院長自身は、8月に4回目の従来型ワクチンの接種を終えております。
当院では、通院中の患者さんに「重症化リスクが高い人」がそれほど多くないこともあり、この新ワクチンを取り扱う予定は今のところございません。
ご了承ください。
さて、もう1つが「インフルエンザワクチンを打つべきか?」という問題。
コロナの流行以降、世界的にインフルエンザの流行は見られていませんでしたが、日本を含む北半球の流行を予測する上で大切な指標となる南半球のオーストラリアでは、今年の 4 月から8月にかけて3年ぶりにインフルエンザ(90%がA型)が流行しました。
コロナ前の2017年や2019年の流行を超える、大きな感染の波だったようです。
ちなみに、オーストラリアでは同時期に新型コロナの感染者が1日に3万人〜5万人程度出ていましたので、コロナとインフルの同時流行が起こっていたということになります。
はたして、今年の冬はついに日本でもインフルが猛威を振るうのか?
それとも、今年も肩透かしで終わるのか?(その方が良いのですが)
答えは神のみぞ知るですが、こちらはできればワクチンによる予防をしておきたいところです。
(こちらも感染することを完全に防げる訳ではありませんが)
当院では、10月1日よりご希望される方に対してインフルエンザワクチンの接種を開始いたしますので、受付で接種のご希望をお伝えください。
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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医