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オミクロンとワクチン3回目の意味

オミクロンとワクチン3回目の意味

オミクロン株の登場によって、新型コロナウイルスが再び世界中で猛威を振るっています。

国内でも感染者数が連日過去最多を更新し、昨日は1日で5万人を超えてしまいました。

 

「でも、オミクロンなんて、もうただの風邪でしょ?」

 

・・・そんな楽観的なご意見も聞こえてきますが、果たして本当に感染しても大丈夫なウイルスになったのでしょうか?

 

確かに、オミクロン株は「爆発的な感染力の強さ」と「毒性の低さ」が特徴の、これまでの新型コロナとは全く「異質」なウイルスです。

 

それもそのはず。

あまり報道されていませんが、実は、オミクロン株は昨年大流行したデルタ株とは全く別の系統から生まれたウイルスなのです。

この系統樹をみると、新型コロナウイルスが報告されてからこの2年余りの間に、数多くの変異株が生まれ、分岐していったことが分かります。(図の横軸は年月です)

感染力の弱いウイルスは感染力の強い新たな変異ウイルスによって駆逐され、今現在世界で残っているのはデルタ株の仲間と、オミクロン株だけになっています。

そして、デルタの元になった変異株と、オミクロンの元になった変異株は、遡ると流行のずいぶん初期の段階で枝分かれしていることが分かります。

オミクロンは、南アフリカでしぶとく生き残っていた初期の株から突如発生した変異株であり、デルタとは起源が異なるウイルスなのです。

 

ですから「オミクロンはデルタが変異して急に弱毒化したウイルス」という認識は、完全に誤りです。

デルタとオミクロンの関係は、例えれば「いとこの子ども」ぐらい顔も分からん遠〜い親戚=「ほぼほぼ他人」という間柄です。

「ほぼほぼ他人」ですから、過去にデルタ株に感染して自然に抗体を獲得したという人にも、オミクロンは簡単に再感染してしまいます。

 

 

オミクロン株の感染による主な症状は、発熱、咳、倦怠感、のどの痛みといった、正に「風邪」そのものの症状のようです。

また、これまでのコロナ感染で目立った嗅覚や味覚の異常はほとんどみられず、デルタ株のような人工呼吸器を必要とする重症化が少ないのも今のところ事実です。

 

基礎研究においても、オミクロン株はデルタ株に比べてヒトの気管支におけるウイルスの増殖が非常に速い一方で、肺では大幅に遅かったとの報告がなされています。

これは、気管支の炎症によるかぜ症状が主で、デルタのように肺炎は起こしにくく、その一方で増殖力が強いためにこれまでの株以上に爆発的な感染拡大を引き起こすというオミクロン株の臨床的な特徴とも合致しています。

 

「じゃあ、感染しても大丈夫なんじゃ・・・」

 

確かに、若者では「風邪」程度の症状で済むことが多いのですが、高齢者や持病のある人、ワクチンを接種していない人では、入院が必要になる程度の悪化(中等症)はオミクロン株でもそれほど大幅には減っていません。

そして、感染した本人は大丈夫でも、重症化のリスクが高い周りの人にうつしてしまう可能性は、恐ろしく強い感染力によってこれまで以上に高まっています。

マスクや手洗い、人流の抑制が定着したこの世の中で、これほど爆発的に世界中の人を一気に飲み込むウイルスは、到底「ただの風邪」とは呼べません。

やはり、毒性が弱いとされるオミクロン株であっても、感染しないに越したことはないのです。

 

 

では、ワクチンの接種でオミクロンの感染を防ぐことができるのでしょうか?

 

オミクロンは、これまでのワクチンの接種によって獲得した抗体が、働きにくくなるような変異をいくつも併せ持つ「免疫逃避型」と呼ばれるタイプの変異株です。

それが、ワクチンを2回接種した後でもブレイクスルー感染が起こっている主な理由です。

 

そもそも、現在使用されているワクチンは、変異の無いオリジナルのウイルスを元に作られたものです。

変異を繰り返した結果生み出されたオミクロン株に対して、感染すること自体をワクチンで完全に予防することは、残念ながらできません。

 

それは、先行して3回目、さらには4回目のワクチン接種まで推し進めているイスラエルの状況を見ても分かります。

積極的なワクチンの接種でデルタ株の流行の波から逃れることに成功したイスラエルですが、オミクロン株の感染爆発は避けられなかったようです。

すでに54%の国民が3回目以上のブースター接種を終えているにもかかわらず、オミクロンの感染は未だに広がり続けています。

つまり、ワクチンを何度打ってもオミクロンの感染から逃れることはできないのです。

 

「じゃあ、3回目のワクチンを接種しても意味ないんじゃ・・・」

 

いいえ、決してそうではありません。

 

「感染しなくなる」わけではありませんが、「重症化を抑える」効果は十分にあるからです。

 

2回目のワクチン接種から25週間が経つと、オミクロン株に対する入院予防効果は52%になります。それに対し、3回目の追加接種後では88%にまで効果が上昇することが確認されています。

つまり、オミクロン自体が弱毒という理由だけではなく、ワクチン接種で免疫を獲得していることで、入院しなくても良い「風邪」程度の症状で済む確率が上がるのです。

 

ワクチン接種は、自然にコロナに感染するよりも安定した抗体とT細胞免疫を誘導できます。

しかし、その効果は半年程度で落ちてしまいます。

もう一度免疫を高めるためには、どうしても追加接種が必要になります。

 

私も昨日、3回目のワクチン接種を行いました。

 

副反応は、今のところ打った腕の筋肉痛と、体の節々がちょっと痛むかな・・という程度で済んでいます。(おっさんやから軽いねん・・・)

3回目接種後の副反応は、個人差はありますが2回目と同じかやや強い程度という報告が多いようです。

 

2022年2月以降、クリニックでもかかりつけの方を対象に順次3回目のワクチン接種を行っていきますので、ホームページのお知らせ欄をご確認ください。

 

 

さて、もう1つの疑問。

「いつまで続くねん!」

 

はい、正直もううんざりですよね。

「ただの風邪だし、もういいじゃん。」ってなる気持ちも、よく分かります。

 

「弱毒株」のオミクロンが広がって集団免疫が獲得できれば世界中でパンデミックが終わる・・・といった楽観論もありますが、はたしてどうでしょうか?

 

先行する南アフリカやイギリスの状況をみると、オミクロンの感染はおよそ1か月でピークアウトしています。

これを踏まえると、おそらく日本でも1月末あたりの比較的早い時期をピークに、3月頃には一旦は収束する可能性が高いのではないかと予想しています。

 

それはワクチンの効果でも、マンボウの効果でもなく、「感染しやすい人に一通り感染したら一旦は収束する」というこれまでと同じパンデミックの流れの中でおこる自然な波として・・・です。

 

さらに、オミクロンがデルタを駆逐してパンデミックが終わり!・・・なんてことになれば万々歳なのですが・・・

オミクロンの中でも変異は日々発生していますので、そう簡単にはいかないでしょう。

毒性が上がったオミクロンの変異株がでてきても、おかしくはありません。

 

そして、今回のオミクロン株のように、必ずしも今流行っている株から次に流行る変異株が生まれてくるとは限りません。

 

世界のどこかで駆逐されずに生き残ったデルタ株からさらに感染力を増した変異株が派生した場合には、性質が全く違うオミクロンの感染で自然に獲得した免疫は、おそらくほとんど役に立たないでしょう。

 

新型コロナが一日も早く普通の「風邪」並みに落ち着くことを願うばかりですが、次の流行の「波」が起こるかどうかは、今後どんな特徴を持った変異株が出てくるか次第だと思います。

 

まずは、オミクロンの流行が過ぎ去るまで耐えること。

そして、オミクロン後の展開が見通せない今、わたしたちにできることは3回目のワクチン接種粛々と進め、感染予防に努めることではないでしょうか。

 

一日も早いコロナの収束を祈って。

 

西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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