アダムスキー式腸活法とは?
「腸活」関連の本は、世の中にたくさん出ています。
書かれている内容で共通しているのは、大まかに言うと
・発酵食品を食べよう!
・食物繊維を摂ろう!
といったところでしょうか。
確かに、多くの日本人が発酵食品や食物繊維の摂取が足りていませんので、そこを意識する「腸活」にはもちろん意味があります。
ただ、「これさえ食べておけば腸に良い」という、単純なことではないとも思います。
そこで今日ご紹介するのは、よくある腸活本とはちょっと違う、ユニークな視点で書かれた本です。
イタリアの自然療法士フランク・ラポルト=アダムスキーさんが書いた「腸がすべて」という本には、食べ物が消化される「スピード」と、それに基づく「食べ合わせ」の良しあしが書かれています。
「鰻と梅干し」
「天ぷらとスイカ」
など、日本にも昔からの言い伝えで食べ合わせが悪いと言われているものがありますよね。
「アダムスキー式腸活法」の基本は、食べ物を消化されるスピードで3つのカテゴリーに分けて考えることです。
消化の早い食品を「ファスト」、消化が遅い食品を「スロー」、どちらでもない中間の消化スピードの食品を「ニュートラル」と分類しています。
消化に要する時間は、「ファスト」の食品が30分〜2時間であるのに対し、「スロー」の食品は8〜10時間もかかると述べられています。
同じ食べ物でも、小腸で消化されるスピードがこんなに違うとは驚きです。
そして興味深いのが、腸を通過する速度が全く違う「ファスト」と「スロー」の食品を同時に食べると、なんと消化に18〜24時間もかかってしまうということです。
つまり、「スロー」の食品だけを食べた時よりも、消化するのに2倍以上の時間を要するのです。
早く進みたい「ファスト」の食品と、ゆっくりと進みたい「スロー」の食品が、腸の中で「渋滞」を起こすと説明されていますが、なんとなくイメージが湧いてきます。
腸に長時間滞在した食べ物は発酵・腐敗し、「腸の汚れ」の原因になるので、「ファスト」と「スロー」の食品の組み合わせは絶対に避けるべきだ!というのがアダムスキーさんの考えです。
アダムスキーさんがこの理論を発表したのは、実は30年も昔の1992年のことだそうで、最近の腸活ブームで再び注目されているようです。
小腸を手軽にみることができるカプセル内視鏡が開発されていなかった30年以上前に、いったいどんな方法でそれぞれの食べ物が消化される時間を検証したのか?が知りたいところですが、残念ながら詳しい実験や研究の方法は本書には書かれていませんでした。
そのあたりの根拠になるデータが示されていると、信憑性がよりあがるのにな・・・というのが医師目線で読んだ本の感想です。
さて、「アダムスキー式腸活法」はすごく単純で、「ファスト」と「スロー」の食品を同時に食べないようにすることがすべてです。
「ファスト」の食品を食べる時は「ファスト同士」か「ファスト+ニュートラル」の組み合わせ、「スロー」を食べる時は「スロー同士」か「スロー+ニュートラル」を組み合わせるようにします。
組み合わせを頭に思い描くと・・・
やっかいなのは「ファスト」に分類される「トマト」ですね。
トマトソース(ファスト)のパスタ(スロー)やピザ(スロー)はもちろんNG
あ〜マルゲリータ〜(*´口`)ノ
ケチャップ(ファスト)で味付けしたオムライス(米・卵・鶏肉:スロー)もNG
トマト(ファスト)の入った野菜サラダ(スロー)でさえNGです。
トマト自体は体にとても良いと本でおすすめされていますが・・・
トマトはいったい、いつ、どうやって食うねん?
トマトだけの朝ご飯とか、おやつにトマト!とか絶対ないわ。
ちなみに、カレーライスもカレーうどんもNGです。
唐辛子を含む香辛料(ファスト)+肉・米・うどん(スロー)ですからね。
これに準じると麻婆豆腐とかキムチもあかんなぁ。
確かにピザやカレー、オムライスを昼に食べた後、いつまでも胃がもたれてお腹いっぱいという感じはありましたが・・・
カレーが食えんのは、正直きついなぁ・・・。
他にも、
レモン(ファスト)を焼き魚や塩タン、唐揚げ(スロー)にかけるのもNG
・・・って、好きなもんばっかりやんか。
果物(ファスト)の入ったケーキ(スロー)もNG
トースト(スロー)にジャム(ファスト)もNGです。
ちなみに、これらのNGな組み合わせの食べ物をどうしても食べたいときには、誘惑に負ける前に良質なオリーブオイルを先に一口すすっておくと、食べ物の渋滞が少し和らげられるそうです。
なるほど。
では、腸に負担を掛けないように消化のスピードも考量した、院長おすすめの腸活メニューは・・・
朝食:果物、はちみつをかけたヨーグルト、フルーツジュース、トマトジュースなどの「ファスト」だけ
昼食:納豆、めかぶ、卵、魚、味噌汁、のり、ご飯など食物繊維と発酵食品を意識した油を使わない「スロー」だけ
おやつ:ドライフルーツなどの「ファスト」だけ
夕食:肉、魚、野菜、米、ビール、ワインなど「スロー+ニュートラル」をバランスよく
なんかが、良いんじゃないでしょうか?
実際、わたしは今、ほぼほぼこの食生活を実践してみています。
(←いや、ちょくちょく昼にカレーも食ってるやん)
本にはこの「アダムスキー式腸活法」で「あらゆる体の不調が改善される!」なんて書かれていますが、それは大げさだとしても、「胃もたれ」や「お腹の張り」「便秘」といった胃腸の不調を抱えておられる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
腸活の方法は多々ありますので、自分の体質や体調に合った方法が見つかると良いですね。
あっ、それからクリニックで午後に胃カメラを受ける方の、「検査当日の朝食」の内容も、アダムスキー式に準じて3月から変更してみました。
変更前は、
「朝食は7時30分までならパン(総菜パン以外)、具なしスープ(コンソメ・ポタージュなど)、ヨーグルト、ゼリーは食べていただいて構いません。」でした。
とくに根拠は無く、食物繊維の少ないものなら消化が早くて良いだろう・・・程度の考えで設定していました。
ところが時々、消化の悪い方がいて、午後になっても朝食べた食事がモロモロと胃の中に残っている方がおられました。
そこで、
「朝食は9時までにお済ませください。食べてよい朝食:くだもの(なんでも可)、はちみつ、ヨーグルト、飲んでよい朝食:トマトジュース、フルーツジュース(野菜ジュースは不可)、緑茶、水」に変えてみました。
つまり「ファスト」なら何でもOK。
これなら理論通りに行くと、遅くとも2時間後には胃どころか小腸も通過しているはず。
そこで、食べてよい時間帯も1時間30分後ろ倒しにしてみました。
より実践しやすい内容に改良できたのではないかと思います。
今のところ、午後からの胃カメラ検査を食べ物の残りかすに悩まされることなく、ちゃんとできています。
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医