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ひだ胃腸内視鏡クリニック

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胃腸内科 / 内視鏡内科

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雨の日の心理学

雨の日の心理学

こころのケアは、「はじめる」ものではなくて、ある日突然「はじまってしまう」もの。

 

子どもが学校に行けなくなる。

パートナーが夜眠れなくなる。

部下が会社に来なくなる。

友人から「もう死んでしまいたい」と連絡が来る。

・・・

 

どうしてそうなったのか、なにをすればいいのか、これからどうなるのか、全然分からない。

 

今回紹介する「雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら」という本は、

突如としてこころに不調をきたすことを「雨」にたとえ、

こころのケアとはなにか、

こころをわかることとどういうことか、

こころはどうしたらきけるのか、

こころはなにをすれば助かるのか、

ケアする人のケアとは、

について、著者であり臨床心理士の東畑さんが分かりやすく記した「素人が身近な人をケアするための心理学」です。

 

わたしたち医療従事者にとって、ケアは身近なものなのですが、できることは病気の正しい診断、適切な治療薬の処方など、ケアのほんの一部にすぎません。

実際にベッドで体を休めるのは本人の意思だし(セルフケア)、そのために仕事を調整するのは職場の同僚、食事や洗濯などの生活を支えるのは家族といったように、病気からの回復の九割五分を支えているのは、実は素人によるケアです。

 

同じように、こころのケアの九割五分はカウンセラーや精神科医ではなく、身近な素人によってなされています。

 

消化器内科が専門のわたしも、ケアの中でも「こころのケア」となると、みなさんと同じく素人の一人。

悩みを抱えた方にどう声をかけるべきか、こちらもいつも悩んでいます。

 

そこで、立ち寄った本屋さんでふと目に留まったこの一冊を読んでみました。

 

印象に残ったフレーズをいくつか挙げると・・・

 

・ケアとは傷つけないことである。

・ケアとはニーズを満たすことである。

・知ることがケアになる。

・傷つきと向き合うのがセラピー。

・セラピーとは自立を促すことである。

・ケアなしのセラピーは暴力になる。

・「優しさ」とは、人と自分との「似ているところを見つける技術」である。

・スルーしたい話ほど勇気を出す。

・環境を変えるのが助かるおせっかい、本人を変えようとするのは余計なお世話。

・環境はうまくいっているときには忘れられて、失敗したときにだけ思い出される。

・完璧な環境よりも、ときどき失敗する環境の方がよい。

・ケアには納品がない。

・ケアする人がケアされていないとき、ケアはつらくなる。

 

「心理学」と聞くととっつきにくい感じがしますが、専門的な精神分析理論が巧みな比喩で素人にも分かりやく書かれており、ケアした経験がある方にはすっと腑に落ちるはず。

あー、そうそう、うんうん、そうだよねって何度も頷きながら読みました。

 

身近な人をケアすることになった人が、何をするといいのか、逆に何をしないほうがいいのか、とるべき行動が具体的に書かれており、大変ためになるこの1冊。

 

すべての人にお勧めできる良著です。

 

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

日本炎症性腸疾患学会IBD専門医・指導医

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