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潰瘍性大腸炎が「指定難病」から外される!??

潰瘍性大腸炎が「指定難病」から外される!??

潰瘍性大腸炎は、食事や衛生状態などの環境、ストレス、遺伝子などさまざまな要因が複雑に絡み合って発症する病気です。

 

原因が1つの病気ではありませんので、治療によって症状を落ち着けることはできても、残念ながら薬が全く必要ない「完治」に至ることはありません。

また、発症のピークが20~30歳代の若い世代であることから、学業や就業、結婚や出産といったライフイベントに影響を与えてしまう場合もあります。

 

国から「指定難病」に認定されており、高額な治療費がかかる場合でも、患者さんは医療費の助成を受けることができています。

 

・・・が、「指定難病」の中でも患者数が飛びぬけて多くなり(推定で25万人以上)、治療の進歩で「軽症」の患者さんの割合が増えた今、潰瘍性大腸炎が「指定難病」から外されるかもしれない・・・という懸念が高まっているのです。

 

「難病」と呼ばれる病気は世界に数千あるとも言われますが、厚生労働省はそのうち「患者数が一定数以下で診断基準が確立している」341の疾病を指定しています。

 

実は、かねてより厚生労働省・疾病対策部会において、指定難病の検討(見直し)が進められてきました。

 

そして、昨年末(2023年12月27日)に出された会議の資料には、以下のような文言が書かれていました。

 

(1)「指定難病の対象となる疾病に係る考え方」について

調査研究及び医療技術の進展により得られた治療方法等により、指定難病の要件に合致しない状況であると判断される場合には、対象疾病の見直しについて検討する。

 

(2)「治療法が確立していない」ことについて

根治のための治療方法がなく、継続的な治療が必要な疾病であっても、一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合には、該当しないものとする。

 

(3)「長期の療養を必要とする」ことについて

軽症者の多い疾病は該当しないものとし、「長期の療養を必要とする」の要件を満たすかどうかについては、その疾病の全患者数のうち、重症度分類等で医療費助成の対象となる者の割合を考慮する。

 

(4)「患者数が本邦において一定の人数に達しないこと」について

当面の間は、0.15 %未満を目安とすることとし、具体的には患者数が18 万人(0.142 %)未満であった場合には「0.1 %程度以下」に該当するものとする。

 

この発表を受けて、「潰瘍性大腸炎を指定難病から外そうとしているのではないのか?」と憂慮したIBD関連の患者会は、厚労省に要望書などを通じ強く働きかけていました。

 

また、この内容はマスコミにも取り上げられ、先日はTV(朝日放送)で放映されていました。

ニュースの記事リンク

 

そういった声を受けてなのか、急遽、厚労省難病制度検討会議が10月15日に行われました。

 

どうなることかと心配しながら、会議の中継をライブで見ていましたが・・・

 

そこで配布された新しい資料を、昨年のものと比較すると、

 

(1)「指定難病の対象となる疾病に係る考え方」について

調査研究及び医療技術の進展により得られた治療方法等により、指定難病の要件に合致しない状況であると判断される場合には、対象疾病の見直しについて検討する。

→今回の資料では省かれていた。

 

(2)「治療法が確立していない」ことについて

根治のための治療方法がなく、継続的な治療が必要な疾病であっても、一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合には、該当しないものとする。

→今回の資料では省かれ、下記の表現に変更。(内容的にはほぼ同じ?)

・以下の場合には該当しない。

対症療法や進行を遅らせる治療方法等により、一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合。

 

(3)「長期の療養を必要とする」ことについて

軽症者の多い疾病は該当しないものとし、「長期の療養を必要とする」の要件を満たすかどうかについては、その疾病の全患者数のうち、重症度分類等で医療費助成の対象となる者の割合を考慮する。(※)

→下記の(※)が追記された。

(※)ただし、既存の指定難病の見直しにおいては、医療費助成による治療等の効果により軽症を維持している患者がいることを考慮する。

 

(4)「患者数が本邦において一定の人数に達しないこと」について

当面の間は、0.15 %未満を目安とすることとし、具体的には患者数が18 万人(0.142 %)未満であった場合には「0.1 %程度以下」に該当するものとする。

→文言の変更はないものの、質疑応答の中で現時点では潰瘍性大腸炎は該当しないとの発言がありました。

 

・・・ということで、昨年の会議よりは表現などが和らぎ、潰瘍性大腸炎がすぐに指定難病から外されることはなさそうな印象で、安堵しました。

 

もしも、すべての潰瘍性大腸炎の患者さんが指定難病から外れることになると、大変な事態です。

例え「軽症」の方であっても、1回の治療が何十万円もかかる生物学定期製剤などを用いることで、何とか保っているという方も少なくありません。

対象から外れた場合には、高額な医療費が経済的な負担となり、「受診控え」が起きることが予想されます。

 

「受診控え」で無治療になってしまうと、当然ですが病気の再燃や入院などに至る確率が増えることに繋がり、結果としてかえって医療費が増大してしまう可能性があります。

 

この先も患者さんは増え続け、次々と高額な新薬が登場することを考えると、限りある医療費の財源をどうするのか?といった問題は尽きないのですが、政府には難病患者さんの実情を踏まえて、しっかりと考えていただきたいと思います。

 

「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

日本炎症性腸疾患学会IBD専門医・指導医

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