日々是チャレンジ:その①「氷麻酔」
「失敗や変化を恐れず、新しいことにチャレンジします」
これはわたしたちのクリニックが掲げるクレド(信条)の1つです。
患者さんに安心・安全な内視鏡検査を受けて頂けるように、日々新たなチャレンジを続けています。
思いついたアイデアに見合う既製品が無ければ、知恵を絞って自作!
これまでに色々と行ってきた工夫の一部をご紹介したいと思います。
第一弾は「氷麻酔」です。
胃カメラを入れる前には、喉(のど)に局所麻酔を行います。
ゼリー状の麻酔薬を喉の奥に3分間貯めるというのが一般的なやり方なのですが、これがなかなかの曲者・・・
「呑み込まないで喉の奥に溜めてくださいね〜」と言われても患者さんにとってなかなか難しく、しかもこのゼリーがやたら苦いのです。
この喉麻酔が苦手なせいで、胃カメラを敬遠してしまう方も少なからずおられます。
以前から「何とかならんのかなぁ・・・」と思っていましたが、麻酔薬を「氷」にして舐めるという方法を行っている施設があることを知りました。
「これはよさそう!」と、さっそく看護師さんと試してみたのですが・・・
やってみるとそう簡単には行かず、奥が深い!
そこからは試行錯誤の連続でした。
凍らせる前に麻酔薬のゼリーと混ぜてみたのは、カルピス、粉末ジュース、経腸栄養剤用のフレーバー、水あめ、などなど・・・
種類や濃度を変えながら、できあがったものを1つずつ「味」「溶ける時間」「麻酔の効き具合」について、体を張って自分たちで舐めて検証していきます。
・・・と言ってもわたしじゃなく、ほとんど看護師さんがやってくれているんですけど
<(_ _)> ありがとう!
舐めた瞬間「激マズでアウト!」のものもありましたが、なによりも問題だったのが、フレーバーを加えると麻酔の効き目が悪くなることでした。
「あれ? おいしく舐められるけど、麻酔があまり効かないぞ・・・」
フレーバーを加える分、単純に麻酔薬が薄まるのが問題なのではなく、どうやらフレーバーに含まれる何らかの成分に反応して麻酔の効き方自体が変わってしまうようです。
確かに簡単に味が改良できるのであれば、最初から薬屋さんがやってるはずか・・・
そんな中辿り着いたのが、経腸栄養用のコーヒー味のフレーバーを用いた氷麻酔。
もともと苦みのある麻酔薬にコーヒーの香りと甘みがマッチして違和感なく舐められる上、麻酔の効き具合も申し分ない。
これならOKです。
どうですか? おいしそうでしょ?
患者さんにしていただくことは、「氷を噛まずに舐める」ことだけです。
すると麻酔薬を含んだコーヒー味の氷が口の中で少しずつ溶けていき、ゆっくりと喉に流れて麻酔が効いていく・・・
おかげさまで、患者さんにはとても好評です。
ただ、コーヒー味が苦手な方もおられますし、胃カメラで観察するときにコーヒーの色が少し気になるなど、まだまだ改良したいところも残っていますので、今もトライ&エラーを繰り返しながら別のフレーバーで検証を続けています。
氷麻酔の開発に着手してはや半年以上・・・商品?になったのはコーヒー味だけ。
なんだかコンビニスイーツみたいですね。
たぶん、ここまで本気で体を張って検証している医療機関は他にはあまりないんじゃないかと思います。
患者さんに使っていただく以上、当然のことなのですが。
さて、今年の10月からはここ西宮市でもバリウムに変わって胃カメラによる胃がん検診が始まります。
そのころにまでに新しい味の氷麻酔が間に合うと良いなぁ・・・
うまく行かないことも多々ありますが、みなさまに少しでも快適に内視鏡検査を受けてもらえるように、これからも変化を恐れずチャレンジします!
西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ