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アニサキスにまつわるエトセトラ:その2

アニサキスにまつわるエトセトラ:その2

どこよりも詳しい?アニサキスの解説第2弾です。

 

アニサキスは寄生虫の一種です。

わたしたちが魚に付いているのを目にする長さ約2cmの白い糸状のものは、実はアニサキスの幼体。

 

では、アニサキスとはどのような寄生虫なのでしょうか?

 

アニサキスは海生哺乳類(クジラやイルカ)の体内で大人になり、卵を産みます。

卵はクジラの糞と一緒に海中に放出され、海中でふ化します。

ふ化して海に漂うアニサキスは、オキアミに食べられます。

ところが、食べられてもアニサキスは死にません。

オキアミの体内に寄生し、幼体に成長していきます。

そして今度は、そのオキアミをサバ、イワシ、カツオなどの回遊魚が食べます。

さらに、その魚を捕食した別の魚介にもアニサキスの寄生は広がります。

食べられるたびに宿主へ乗り換え、体内に寄生して徐々に成長し、最終的にクジラやイルカに食べられたらゴール。

そこで成虫に育ち、卵を産んで・・・というサイクルがアニサキスの一生です。

内閣府食品安全委員会ファクトシートより

 

ところが同じ哺乳類でも、途中で人間に食べられちゃあ生きていけない。

アニサキスにとってはいい迷惑です。(←なにこのアニサキス目線の語り?)

ヒトの体内では1週間ほどで死ぬ運命。

ならば、こやつにせめて最後のひと噛みを・・・で、胃にガブッ!

というのが、アニサキス症です。

 

それでは、なぜ今、アニサキス症がこんなに増えているのか?

 

そもそも日本人は「生」が大好き。

魚介類を刺身や寿司で生のまま食べる文化が根付いているところに、冷蔵輸送技術の進歩によって魚を冷凍せずに新鮮なまま運べるようになりました。

当然ですが、冷凍されていれば死んでいたアニサキスも、魚と共に新鮮(?)なまま生きて運ばれるようになったのです。

さらに、消費者のし好が多様化し、今まで流通していなかったような魚まで「生で食べたい!」とい要望が強くなったことも一因だと考えられます。

 

スーパーで売ってるお刺身も、「解凍」って書いてあるものより「生」「天然」「産地直送」の方が、圧倒的に魅力的ですもんねぇ・・・

ですが、鮮度がよい方がかえって危ない食中毒もあるのです。

 

さらに他にも、捕鯨の禁止によってクジラの絶対数が増えたことや温暖化による日本近海の海流の変化などが、アニサキスが増えた要因だと考えられています。

 

実は、世界で起きているアニサキス症の95%(!!)が日本で起きているそうです。

生で食べる分化がない国では、当然ですが消化器内科医も「アニサキス?何それ?聞いたことない。」っていう感じだと思います。

 

魚の中でも、とくに気を付けたいのは、オキアミを直接食べるサンマ、サバ、イワシといった回遊魚。

酢で〆ようがアニサキスは死なないので、しめ鯖は要注意です。

寿司や和食店のように、普段から生の魚の取り扱いやアニサキスの処理に精通しているところは、割と安全。

スーパーや鮮魚店なども、最近はアニサキスにものすごく注意を払っていますので、意外と大丈夫な印象です。(←責任は持てません。悪しからず。)

 

先日アニサキス症でクリニックに来られた方の感染源は、イタリアンのカルパッチョ。

和食系以外の飲食店で提供される生魚は、意外と盲点だったりします。

 

あと、自分で釣った魚は要注意!

最高に新鮮だから大丈夫なはず・・・という油断がアニサキスの元。

アニサキスは、主に内臓の表面にいます。

常温で放置すると、アニサキスが筋肉内へ移行しやすくなりますので、釣った魚はすぐに内臓を取り除き、アイスボックスで保管しましょう。

捌くときのチェックもお忘れなく。

 

そして、ことアニサキスに関して最も安全と言える生魚は、意外と「養殖」の魚だったりします。

養殖魚のエサに、まず生のオキアミを使うことはありません。

冷凍や乾燥しているエサからアニサキスが寄生することは、ないのです。

また、養殖の生簀は大抵は海流の穏やかな内湾にありますので、外洋からオキアミが流れ込む可能性はゼロとは言えませんが、実質はほぼ考えなくて良いレベル。

 

サケやマスに寄生したアニサキスは、腹部の筋肉内に多くいると言われています。

養殖だからこそ、サーモンは生で食べられるのです。

一方で、日本の天然の鮭の生食は危険です。

北海道には鮭を一旦冷凍してから食べる「ルイベ」という伝統的な食べ物がありますが、これは保存とアニサキスによる食中毒の予防を兼ねた、生活の知恵です。

 

次週は、アニサキスに当たったらどうなる?どうする?についてお話しします。

 

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「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸の公式ブログ

 

日本消化器内視鏡学会専門医 

日本消化器病学会専門医、評議員

日本消化管学会胃腸科専門医

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