スティックで採取した便の中に目で見て分からないほどの微量な血液が混じっている(陽性)か、いないか(陰性)を調べる検査で、大腸がん検診として広く実施されています。
普通の状態では食べた物が消化管を通って肛門から便として排泄される間に、血が混じることはありません。この検査は食べたお肉や鉄剤などには反応せず、ヒトの血液に含まれるヘモグロビンだけに反応するようになっていますので、陽性と判定された方は、消化管、とくに大腸から肛門のどこかに出血する原因があることを意味しています。
2日間の便を調べることが大事で、どちらか1回でも陽性なら、大腸カメラによる精密検査を受ける必要があります。
2日のうち1日分だけが陽性の時に、「もう1回、便潜血検査を受けさせてください」とお願いされる方もおられますが、もう1回調べた結果が陰性なら大丈夫・・・とは、絶対に言えません。
たとえ大腸にがんがあったとしても、毎日便に血が混じるわけではありません。大腸がんがあるのに検査が陰性になってしまう見逃し(偽陰性)をできるだけ減らすために、わざわざ2日間続けて便を調べるわけですから、そのうち1回でも陽性なら、それは陽性なのです。
40歳以上の100人が便潜血検査を受けたとすると、陽性で引っかかる人はだいたい5〜7人程度です。
結果が陰性だった場合には、毎年繰り返し受けることが大切です。
今年の検査で陰性だったから、検査の間隔を2~3年空けても大丈夫だろう・・・はNGです。1回の検査だけでは大腸がんが見逃される可能性があるからです。
毎年検診を受け続けることで、4分の3の人は救命可能な段階で大腸がんが発見されます。
でも、毎年きっちり受けている人って本当に少ないんです・・・
便潜血検査で陽性反応がでたときには、精密検査を受けることが大切なのは言うまでもありません。しかし、実際に受ける方は6割しかいらっしゃいません。
残りの4割の方は検査で引っかかったのに、「大腸カメラは怖いな・・・」「たぶん痔のせいだろう・・・」「症状が無いから大丈夫・・・」などと放置してしまっています。
これでは、最初から検診を受けないのと同じで、大腸がんを早く見つけることも予防することもできません。
では、便潜血検査陽性の方が大腸カメラによる精密検査を受けた時に、何%ぐらいの人に実際に大腸がんが見つかると思われますか?
答えは、3〜5%です。
「えっ、そんなに少ないの!」と思われた方が多いのではないでしょうか。
便に血が混ざる原因は大腸がんの他にも、痔や良性の大腸ポリープ、腸の炎症などさまざまで、便秘の硬い便で大腸の粘膜をこすったり、きばったりしただけでも陽性になることがあります。
便潜血検査は実際には大腸がんが無いのに検査が陽性になる「偽陽性」が多いのです。
大腸カメラで見たけど、「何もありませんでしたよ。」ということも良くあります。
「なぁんだ、がんばって大腸カメラを受けても95%以上の人に大腸がんが見つからないんじゃあ、余計に受ける気を無くすなぁ・・・」とは、思わないでください!
実は、ここに大腸がんを「早く見つける」だけでなく、大腸がんに「なる人自体を減らす」大きな要因があるのです。
重要なのが、良性の大腸ポリープ、中でも腺腫(せんしゅ)と言う「将来の大腸がんの芽」であるポリープが見つかることです。便潜血陽性がきっかけで大腸カメラを受けた方の30%〜50%に腺腫が見つかると言われています。
大腸カメラで発見した腺腫を切除しておくことで、大腸がんの予防効果が期待できます。実際に、大腸腺腫を内視鏡で切除することで、大腸がんになる率を76~90%も抑えられたとの報告があります。
大腸がんは、数少ない検診をきっかけに「予防できるがん」なのです。
「大腸カメラは辛そう・・・」との思いから精密検査を躊躇されている方もおられると思います。
クリニックでは患者さまに少しでも安心して楽に大腸カメラを受けて頂けるように、さまざまな工夫を凝らしています。
便潜血陽性と診断された方は、ぜひクリニックまでお気軽にご相談ください。
西宮市田中町5-2西宮駅前メディカルビル3F
「ひだ胃腸内視鏡クリニック」院長 樋田信幸
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医、評議員
日本消化管学会胃腸科専門医